死姫

□第ニ話
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「・・・廉斉?廉斉だよね。なんでこんなとこにいるの?」
神威の発言に二人は驚いた。
「オイ神威テメーまさか廉斉姫と知り合いなのか?」
「は?姫?廉斉が?そんなわけないじゃん。廉斉はアバズレで、短気で、ドsで毒舌家だからね」
神威がそこまで言うと廉斉は、
「どなたですか?どうやら私を知っているみたいですけど、私は知りませんよ?というかもし知ってたとしても、絶対知っているなんて言いたくもないわ。」
「よく言うね。とっとと素に戻れば?なに一人前みたいに『お姫様』なんかしてんの?つーか戻れよ馬鹿女」
「あなたにいわれたくないわ。頭カラのくせに何言ってんの?ケンカマニアの分際で」
「馬鹿女に言われたくないな」
「黙ってくれる?気分悪くなるから」
「それはこっ」
「ストップ、ストップ!!ちょっと待てなんなんだお前らは!知り合いなのは分かったからやめろ!」
それまで一連の出来事を見ていた土方と沖田は、会うなりメンチ切り出した二人に仲裁をしようとした。すると、
「「うるせーよ、土方の分際で」」
「・・・仲いいんだな・・」
「「良くない」」
「でも今回は俺の勝ちだね。廉斉素に戻ってるよ?ついでにその格好のうちに殺ろうかなァ」
「あらこれくらいのハンデがないと勝てないでしょう?それにこの格好だからってなめんじゃねーよ。」
おい!と土方が止めようとするが、
「いいじゃないですかい、それにあの姫さんの本性見れやすぜ?」
そう沖田が言うや否や、二人は始めた。
「あ〜あ、屯所全壊しちまうぜ。覚悟した方がいいぞ。あ、あと今すぐここから避難することをおすすめするぜぃ」
「「阿伏兎いたのか(いたのかよ)」」
「・・・おじさんないていい?」
カーン!とゴングが鳴った気がした。
まず神威が、傘を廉斉に突き出した。廉斉はそれをスイスイとよける。
「あり?どしたの反撃なし?腕鈍ったんじゃないの」
「馬鹿いってんじゃないわよ」
そう言うや否や廉斉は服の袖からクナイを取り出し神威に向かって投げた。
「!?」
神威は驚いた。大量のクナイが飛んでき、しかもその速さは吉原の番人、月詠の倍の速さだった。
神威はそのクナイ達をなんとかよけた。そして地面を蹴り、傘を振り下ろした。
廉斉は今度は鉄扇を取り出し応戦した。しばらくその様子を見ていた二人は愕然とした。
「互角・・・いや廉斉姫が押してるか」
「ええ。あの神威が押されてまさぁ。どんだけ強えんですかぃあの姫さん」
「だから言っただろ。あの二人にケンカさせるとひでえことになんだよ」
阿伏兎の言葉を今度は痛感した。まさか、あれほどとは思わなかったのだ。
だが、後悔と共に疑問も感じた。土方は沖田を見ると、そっちも同じことをかんがえていたようで、沖田は土方に聞いてきた。
「姫さんの実力は、たぶん部下達四人も知ってるんですよね?」
「ああ、把握してるはずだろう。だが・・・」
「なんで、俺達真選組にたのんで来たんでしょう」
「俺も分からねえ。・・・今夜聞いてみるか」
二人がそこまで言うと、阿伏兎が止めた。
「止めとけ、止めとけ。絶対言わねえと思うぞ、全員な」
阿伏兎の言葉に疑問の目を向けると、阿伏兎いわくあの姫は、自分のことを、あまり話さないし、部下四人も口が堅く、聞いても答えてくれないということらしい。
「マジであの姫さん、何者なんだよ・・・」
土方は盛大にため息をつきながら言った。
「阿伏兎はなんか知らねーのか」
沖田が聞くと、阿伏兎は知らないと答えた
「姫さん個人のことは、分からんがあの二人の関係は分かるぞ」
それを聞いたとたん土方と沖田は、阿伏兎に詰め寄り問いただした。
「あの姫さんと隊長はいわばライバル同士だ。つっても、隊長だけかもしんねえがな。よく言ってたぜ、『今度会った時は絶対に負かしてやる』って。まだ一回もないけどな」
阿伏兎がそこまで言うと二人はまたも驚き、神威と殺り合っている廉斉をまじまじと見た。
廉斉はあまり動いていないのにも係わらず神威をどんどん追い詰めていった。
そして五分後、廉斉が神威の急所に鉄扇を寸止めし、バトルは終わった。


「ふう。・・・・腕慣らしにはなったかな」
(前より、強くなってた。それに、『本当』の強さを知ってるみたいだったし・・・アノ件のおかげなのかな?)
廉斉は神威とケンカした後、土方に部屋に案内され、着替えをし、部屋の中で考えごとをしていた。

そのころ土方達は、
「こんの馬鹿野郎ォォォォオ!会うなりなにケンカしてんだ!知り合いなのは分かったが、今あの方は、真選組で預かりの身なんだよ。あんな無礼働くなんざ、幕府に知られれば即切腹モンだぞ!」
土方はいつにも増して神威に説教していた。実はあの後、二人が殺り合っていたのを、偶然幕府の役人に見られ、やばいと思った土方が謝罪に行くと、上には報告せず自分の胸の内に留めておくと言われ、なんとか事なきを得たのだ。
「はいはい、すみませんでした」
と、怒鳴られている神威は平然としており、全く反省していなかった。
(それにしても廉斉また強くなってる。でも・・・・勝たないといけないんだ。勝たないと・・・)
それを見た沖田は、
「オイ神威、姫さんとどこで知り合ったんでィ」
突然の質問に神威は少し驚いたが答えた。
「神楽が拾って来たんだよ」
そうしれっと答えるとその場にいた全員がはあァ?と言った。
「神威、もう一度言え」
土方はもう一度聞いた。
「だから、神楽が拾って来たんだよ、ちょうど神楽が6つのときに」
「「・・・・・・」」
二人は茫然とした。
「拾って来たって・・・おいおい」
「ああ、そういや旦那が前に言ってやした。チャイナは拾い癖があって困るって。6つの時からか」
「いや、物心がついたときからだから4つだヨ」
土方はほぼ呆れながら言い、沖田の情報には鋭くツッコミを入れた。
するとそれまで黙っていた阿伏兎が口を開いた。
「なあ隊長、ずっと気になってたんだが、なんであの姫さんとあんなに仲悪いんだ?」
「ああ、それは俺も気になりまさァ。なんでなんでィ」
二人の質問に神威は戸惑いながらも話した。
「・・・・・昔、廉斉に体術教えてもらってて、それで一回も勝てなくてさ・・・」
神威がそう言うと沖田と阿伏兎は唖然とし、それだけの理由?と目で聞き、マヌケ面になった。
しかし土方はなにか思案するような顔をし、何か考えていたようだった。
「とにかく、もうあんなことはするな。わかったか?」
土方の問いにこれまたのんきな声で返事をした。それからしばらくし、山崎が廉斉が呼んでいると言われ、話し合いは一時中断となった。
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