ちょうへん
□違い
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「「「は?」」」
高野さんが突然おかしな事言うのはこれで何回目だろう。
「だから"歯"だよ。ショウタとチアキの歯はどーなってんのって聞いてんの」
「え、なに…高野さん」
「歯は普通にあるけど…」
「うちのリツはバンパイアなのにあんまり鋭くないんだよ。だから二人はどうなってるのかと」
「鋭くなくてすいませんねっ!俺は血を飲まないから必要ないんですよ!!」
「そういう事ですか…」
いきなり羽鳥さんと雪名君が会話に入ってきた。
「チアキのは鋭いですよ。たまに口から血がでますし」
「へへっ。バンパイアっぽいだろっ」
チアキがえへん、と踏ん反り返って言った。
「誰も褒めていない。俺は痛いと言ったんだ。」
また二人の喧嘩が始まる。
まぁ、喧嘩するほど仲が良いっていうからほっとこう。
「ショウタさんのはあまり鋭くないですね。」
「だって俺、雪名とキスするときは危ないからしまってるし。」
ショウタさんの発言に驚いたのはチアキ。ついさっきまで羽鳥さんと喧嘩していたはずなのに今は手を繋いでいる。
(一体二人になにがあったんだ…)
「えっ!?歯ってしまえるのか!?」
「チアキ、知らなかったの?」
「……うん」
「ショウタはおっさんだからな。長く生きてる分詳しいんだろ。」
「「「「「!!」」」」」
ある一人の発言にその場が緊張感に包まれた。
(またお前かっ!!こいつは何度も何度も人が気にしている事を言ってくる。)
「高野さ「こんの…クソ高野がぁぁ!!」
突然の自体に俺は動く事が出来なかった。
それもそのはず、いつもはニコニコしているショウタさんがぶちギレたからだ。
「ひぐっ…ぅっ…うぇぇー」
ショウタさんは泣きながら高野さんに殴りかかる。
だが、そこまで力の強くないショウタさんが叩いても高野さんはびくともしない。
「お前の血全部吸ってやるっ!」
それに痺れを切らしたショウタさんは高野さんを押し倒した。
だが高野さんは焦りもしない。冷静だった。
(っ!…そんなにショウタさんに血を吸われたいのかよ…っ)
「リツ…ショウタ止めなくていいの?」
チアキが心配そうにしている。
だが俺は高野さんに相当ムカついていたので別にいい、と言った。
「…うっ…ぐす…全部吸ってやるからなっ!」
相変わらずショウタさんは半泣きで高野さんに馬乗りになっている。
(あんなの簡単に逃げられるくせにっ!なんで逃げないんだよ!!)
その間にもショウタさんの歯が高野さんの首に近づいていく。
(っ!!やだ、やだ…)
「高野さんっ!」
「ショウタさん!!」
俺と雪名くんが二人を引きはがしたのはほぼ同時だった。
「は、なせっ…ゆきな!」
「ショウタさん、俺以外の血は飲めませんよ?」
「のむっ!意地でも飲んでやるっ!!」
「それにショウタさんはこの中にいる誰よりも若々しいですよ?」
「うぅっ…ゆきなぁ……すき…」
「!…ショウタさん、俺もです。」
すぐ横でそんな会話が繰り広げられていたが俺は聞く余裕さえも無かった。
「高野さん…あんたって奴はっ!…高野さんは俺にだけ血を吸われてればいいんですっ!!」
がぶり。
リツが高野の首筋に噛み付いた。高野がその端正な顔を歪める。
(うっ…ちょっと苦いかも………)
リツの歯はバンパイアに比べると鋭くはないが、人間よりは鋭い。
俺は高野さんの首筋から顔をあげる。
きっと今の俺の顔は嫉妬で歪んでいるだろう。
顔を上げると高野さんと目が合った。
「リツがヤキモチ焼いてくれて嬉しい」
「っべ、別に…ヤキモチじゃ…」
「嬉しい、リツ」
「高野さん……」
*
雪名と、雪名になだめられ、落ち着きを取り戻したショウタ。そして現在も手を繋いでいるバカップル羽鳥とチアキ。
四人は驚きを隠せなかった。
「てゆーか!リツ血を飲んでも大丈夫なのか!?」
「リツはバンパイアではないんだろう?」
「う、うん。多分大丈夫じゃないと思うよ…。てゆーか二人のラブラブっぷりを見てたら俺も雪名といちゃつきたくなってきた…。雪名、だっこ」
「はい、ショウタさん」
「あーっ!ショウタずるいっ。俺もだっこして、トリっ」
「わかったから騒ぐな。」
「わーい!」
それぞれ二人の世界に入る六人。
−そして…リツは三日間寝込みましたとさ。
おしまい♪
バカップル
(いちゃいちゃ、ラブラブ)