ちょうへん
□告白
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−−ずっと会いたかった。
雪名を好きだと自覚した途端、顔が燃えるように熱くなった。
(…くそっ……なんで俺、こんなにドキドキしてんだよ…)
雪名は言った。とびきりの笑顔で。
俺の家に来ませんか?、と。そんな笑顔で聞かれたら頷く他は無いだろう。
*
「ショウタさん、コーヒーでいいですか?」
「う、うん……」
いつもならこんな美味しいシチュエーション、逃したりしないのに。むしろ、自分から迫って行くのに、どうも雪名相手だとそうはいかないようだ。
雪名はやっぱりかっこいいと思う。今更、と思うかもしれないが、仕種の一つ一つまでかっこいい。
雪名……ゆきな、好き…
<……ゆきな>
「?……ショウタさん、俺の事呼びましたか?…なんか今ショウタさんの声が直接頭に響いてきたような…」
「へ!?あ…うん!コーヒーまだかなーって。あははは……」
我ながら酷い言い訳だと思う。
でも仕方ない。無意識だったんだから。
どうやら俺は雪名の事を想いすぎて無意識にテレパシーを使っていたようだ。何と言うマヌケな俺。
とたんに雪名が怪訝そうな顔をする。
「…ショウタさん。なんか俺に隠してないですか?今日、ショウタさんの年齢を聞いたときもおかしかったですし。」
…雪名の鋭い指摘。流石は王子様なだけある。
「え!?ななな、にも!!何も隠してないぜ!?」
はぁ、と雪名がため息をつく。
次の言葉が怖くて体を強張らせる。
「ショウタさんは気付いて無いと思いますけど。俺、ショウタさんのこと好きなんです。…だからショウタさんの事がもっと知りたい。俺に、教えてくれませんか?」
雪名が俺に告白してきた。
嘘だと思いたい。憧れの王子様からの告白なんて。でもその真剣な眼差しを前に冗談だ、なんて言えるはずも無くて。
突然の出来事に俺はただただ、真っ赤になることしか出来なかった。
「っ……!」
雪名はそんな俺にキスをしてきた。
ちゅっ
一瞬触れるだけの短いキス。
そんなキスだけでも俺は溶けてしまいそうで。
(こんな事されたらもう、正直に話すしかないじゃんか。)
俺は長い、長い物語を話す決心をした。
「何百年も前…雪名が生まれるずーっと昔の事だ。…俺は静かな場所でひっそりと暮らしていた。そんな俺に近づいてきた奴がいたんだ。そいつは金持ちで、王子様みたいで……"ユキナ"と名乗った。雪名…そいつとお前は瓜二つなんだ。」
「!!」
「そいつは毎日俺の所にやって来た。正直、最初はうっとうしかった。…でもそのうち、俺はそいつに……恋をした。好きになったんだ、そいつの事を。それから暫くは平穏な毎日が続いた。でもそいつはある日突然死んでしまったんだ。ユキナは死ぬ直前に"俺は生まれ変わってでもまた、ショウタさんに会いに行きます。"ってな。だから最初、お前を見た時は"ユキナ"かと思った。…そいつが死んだ後、俺も死のうとしたんだ。…でも何度死のうとしても……死ね無かった。…俺は死ねないんだ。人間じゃないから。…雪名。俺の事、気持ち悪がっても構わない。俺はお前に会って変われた。…もう一度、恋をしてみようと思ったんだ。…俺は……雪名が好きだ。」
一通り話終えると今まで俯いていた雪名が顔をあげた。
その目は心無しか潤んでいるように見えた。
「ショウタさん…俺……」
(聞きたくない。……雪名からの拒絶の言葉は聞きたくない…)
「分かってる。黙っててごめんな。…じゃ、俺かえ「ショウタさん!貴方は何も分かってない!!」
雪名が今までに見たことの無いような怒った顔をしていた。美人が怒るとこわい、と言うが本当にその通りだと思った。
(っなんで引き留めるんだよ!?俺に同情してるのか!?…そんなもの、俺は要らないっ!)
俺の手を掴む雪名を振り払い、俺は玄関へと向かった。
すると、雪名が追いかけてきて、俺を後ろから抱きしめた。
ふわり、雪名のかおりがした。
もう一度、貴方に恋をする為に。