ちょうへん
□契約
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−−どうか、俺を離さないで。
俺は今日、初めて気がついた事がある。
それは、高野さんの事が好きかもしれないということ。…まだ漠然としかわからないけれど。
そんなとき高野さんに
「俺と契約しないか。」
そう、言われた。
さて、こういう場合、俺はどうすれば良いのでしょうか?
「えぇ!?……はぁ!?」
「だから、俺と契約しよう、ってんの。」
「た、高野さん!?俺と契約するという事がどういうことか分かってるんですか!?」
「さぁ?しらん。」
…なら、期待させるような事、言わないでほしい。
(って!何、期待とか言ってんだ!?まだ高野さんのことは好きかもしれない、というだけで、決して好きでは……)
落ち込んだのを悟られないように、俺は大袈裟にため息をつく。
「はぁ……高野さん。俺と契約するということは何もかも捨てて、俺だけを選ぶということですよ!?」
「なんだ、そんなことか。リツ、俺はお前が俺のもんになるなら、何を捨てたって構わない。…俺は何もかも捨ててでもお前と一緒に居たいんだ」
「…っ!!……俺は、いやです。…高野さんには幸せになって貰いたい。高野さんは俺と居ても幸せにはなれません。」
「リツ……」
「そ、れに!!俺は触れた相手の心が読めるんです。…気持ち悪いですよね、人の心が読めるなんて」
「リツ!!」
高野さんが俺の肩を掴む。
「あ………」
初めて、高野さんの心の声が聞こえた。
『俺はお前が好きなんだ……』
それは今にも泣き出してしまいそうな弱々しい声。
「リツ、お前に会うまでの俺は死んでいた。そんな俺をリツ…お前が救ってくれたんだよ。」
「お、れが……?」
「そう。お前とじゃなきゃ幸せになりたくない。お前じゃなきゃ駄目なんだよ…」
「でも……俺は………」
「俺はお前の全てを受け入れたんだ。お前も俺を受け入れろ。」
『俺を…受け入れてくれ……』
言ってる事は傲慢なのに、心の中では不安げで。
あぁ、俺は高野さんが好きなんだ。その事に今さら気づいた。
(もう、好きになる選択肢しか残ってないじゃないか。)
「お前が好きだ。」
その言葉を聞いた瞬間、俺の目から今まで見たことのないような大粒の涙が溢れ出した。
「っ!…け、契約方法は相手の…高野さんのせ、精液を俺に注ぐことです……」
そう言うと高野さんはニヤリとして言った。
「それなら本望だ。」
俺はベッドに押し倒された。
「す、きです。高野さん、…高野さんを俺にください。」
その言葉を言った瞬間、高野さんは驚いたような顔をした後、これでもかと言うような甘い顔で微笑んだ。
「あぁ。俺もだよ、リツ」
これが俺の初めての恋。
繋いだ手、離さないで。