ちょうへん
□絶望
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−−気がつくと貴方が傍にいて。
「−−−………」
「−−−………」
…声が聞こえる。
徐々にはっきりする意識。頭は割れるように痛い。
(あぁ、俺は誘拐されたんだ)
そんなことを冷静に思う自分がいる。
俺が目を覚ましたことに気づいた数人の男達は俺の傍に駆け寄ってくる。
「お前が噂のバンパイアかー。綺麗な顔してんなー」
そう言って男は俺に触れてくる。
『早くヤりてー』
「!!…や、やだ!触らないでっ」
『まじで女みてーだな…』
『もうヤっていーか…?』
『腰細せーな。俺、一番がいいなぁ』
男達が俺に触れてくるので考えていることが聞こえてしまう。
リツの目からは涙がぽたぽたとこぼれ落ちた。
リツの手足はきつく縛られているので動くこともままならない。
「あーあ、泣いちゃったよ。」
「ま、どーせヤれば同じだろ。これから違う意味で鳴くわけだし」
リツの涙はぽたぽたと次から次ぎへと流れ落ちていく。
(も、もうやだ!こんな能力−−−!!)
<−−……律っちゃん!?今何処にいるの!?電話かけても繋がらないしっ!律っちゃん!?>
<た、たすけて!!ショウタさん……っ>
<律っちゃん!?どうしたの!?まさか……誘拐!?>
<たすけて……誘拐…されました…いま、どこかの倉庫です……>
俺がショウタさんとテレパシーで会話している間も男達は俺の体を遠慮無く触ってくる。
「っひ!!あ……や、め……」
ドンッ!!
倉庫の扉がぶち破られた。
「リツ!!」
「チ、アキ…?」
そこにはチアキ、羽鳥さん、柳瀬さん…そして高野さんがいた。
「な、んで……?」
*
チアキ達が俺の所に来た後、ショウタさん達も駆け付けてくれた。勿論男達はもはや原形を留めないほどボコボコになり、どちらが犯罪者?と言うような酷い状態で警察に送られた。
「ありがとうございます…。でも、なんでこの場所が?」
<チアキの予知だよ!まぁ、たまにしか予知できないけどね〜>
<なんだよ、ショウタ!俺が居たからリツが助かったんじゃん!>
<ありがとう、二人とも!!>
チアキとショウタさんが俺に抱き着いてきた。
なので俺も二人に抱き着いた。
*
「すいませんでした、高野さん。」
「偶然吉野、とかいうやつに会ったからな。」
救出の後、俺は皆に謝罪をした。
旅行中だったのに……と俺が言うと口々に、
「そんなのいつだってできるし!!律っちゃんの命には代えられないよ!!」
「まぁ、俺達は死なないけどな…でも!リツが無事で本当、良かった!!」
…と言われて嬉しかった。
そして今はストーカー基、高野さんと歩いている。
「………なぁ。」
「はい…?」
「……お前って人間じゃないのか…?」
運命の歯車が動き出す。