ちょうへん

□誘拐
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−−その日は突然やってきた。









「律っちゃーんっ大変だよー!!」

「へ!?ど、どうかしたんですか!?」
「大変なんだよ!豪華・三泊四日のペア旅行チケットが当たっちゃったんだよ〜!!」

「良かったですね!雪名さん誘えば良いですよー!」


俺がそう言うと、ショウタさんは顔を真っ赤にして、そうする!!あ、なんかあったら電話しろよー!!と叫んで走って行ってしまった。
(幸せそうだなぁ…。)

"ショウタさん"は数少ない俺の仲間であり、友達でもある。
黒い髪に黒い大きな瞳と、とてもかわいらしい顔立ちだ。
だが、顔に似合わず前までは毎日家に男を連れ込む始末だった。
本人は黒歴史だ〜!!と言っているがそれはもう、本当に凄かった。

ショウタさんはバンパイアと淫魔のハーフで普通のバンパイアよりは性欲が強いらしい。
なのでしょうがないといえばそれまでなのかもしれないが……

俺とショウタさんとチアキ(今は外出中)で一緒に住んでいる。
…だからショウタさんの遊び相手とも必然的に顔を合わせるのだが………

そんなことを考えているとチアキが帰ってきた。

「ただいまぁ〜」

「おかえり、チアキ」

「あれ?ショウタは?」

チアキはキョロキョロとショウタさんを探していたので俺は旅行に行ったと告げた。

「まじで!?…実は俺もトリと優と行く約束しちゃってさぁ〜。…リツ、一人でも大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ。楽しんできてね」


「なんかあったら電話かメールしろよ!!んじゃ、行ってくるっ」

「…まったく、二人とも心配しすぎ…」


俺達が住んでいる場所は都内の高級一等地。セキュリティがしっかりしているのが売りの所だから何の問題もない。
なのでストーカーなあの人が忍び込むこともないのだ。






それにしても……
「暇だ…」

はぁ、とリツはため息をつく。

今日でお留守番も三日目。ショウタさんとチアキは明日の夜には帰ってくるだろう。
この三日間でたまっていた本は全部読んでしまった。
もう、何もすることがない。


「出かけよう……」

リツの声が虚しく部屋に響いた。


*


「ありがとうございましたー!」

この間の気だるそうな店員は今日は不在で今日は元気の良い爽やかな店員だった。


(家に帰ってもすることないし、その辺をぶらぶらしよう。)





しばらくその辺の店を見ていると、いきなり男に腕を捕まれた。

「うわ!?ちょっと!離してくださいっ!」


不幸にも今リツのいる通りは人通りが少なく、ちらほらと何人かいる程度だった。
高野さんの時とはちがい、男に腕を捕まれた時には全身がぞわり、と嫌悪感に支配された。

さらに細い裏通りに連れ込まれ、そこで俺の意識は途切れた−−−


孤独の中で、



 

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