プレゼント

□律と翔太のマカロン日和
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時刻は午後3時を回ったところ。


丸川書店内、エメラルド編集部では
2人の男性がそれぞれの仕事を遂行していた。



「んー…疲れたぁ。一息いれようかなぁ。」


先にそう呟いたのは、外見に似合わず、この部署の最年長者である木佐翔太。

小さな身体をぐいーっと伸ばして
仕事中に凝り固まった身体をほぐしていく。

外見は高校生でも、
身体は正直に30歳相応の疲労を訴えるのだ。



「あ、じゃあコーヒー買ってきましょうか。」


その呟きに答えたのが、隣の席にいた
新人編集の小野寺律。


小野寺もまた自分の仕事が一区切りついたので
休憩でもいれようかと思っていたところだった。



「ほんと?じゃあお願いしようかな。
 実はね、午前中、先生のところで貰った
 美味しいマカロンがあるんだ。」


小野寺の提案に、木佐は嬉しそうに笑ってから
足元に置いてあった紙袋を持ち上げてみせる。


「わ、それ有名なとこのですよね。」

「うん、資料用に買ったんだけど、
 食べきれないから編集部でどうぞってさ。」


太っ腹だよねー、と満足そうな木佐に
小野寺も微笑んでから、

スイーツのお供であるコーヒーを買いに
休憩室へと足を運んだのだった。



***


小野寺が戻ってくると、
ちょうど木佐が紙袋の中身を広げていた。

そこには色とりどりのマカロンが揃っていて
小野寺は思わず感嘆の声を漏らす。



「うわぁ、どれも綺麗ですね!」

「だよねー。律っちゃんはどれがいい?」



木佐に促されて、小野寺は机の上の
マカロンたちを見つめて迷ってしまう。


「うーん…どれにしよう。」


色鮮やかなマカロンに目移りしていると、
じゃあ、律っちゃんはコレ、と
木佐が小野寺の手に1つのマカロンを乗せた。


それは白色のマカロンで、
ほんのりとバニラの香りがする。



「なんか律っちゃんって
 マイルドなバニラって感じ。」

「そうですか?」


言われて悪い気がしない言葉に、
小野寺はきょろきょろと残ったマカロンを
眺めて、そのうちの1つを指差す。


「なら木佐さんはカシスですかね。」


小野寺が指したのは紫色のマカロン。


「俺カシスのイメージ?」

「はい、大人なんだけど甘酸っぱいみたいな?」

「きゃー、律っちゃんてば
 よくわかってるー!」
小野寺はきょろきょろと残ったマカロンを

木佐は小野寺の言葉にきゃあきゃあと喜ぶと
じゃあねぇ、と目を輝かせる。


「美濃様は?」

「うーん、美濃さんは…カフェ…かな?」


ベージュ色の柔らかい色合いのマカロンを
小野寺が指差すと、

木佐はちっちっちと指を立てて振る。

「律っちゃんはまだまだ美濃様がわかってないね。」

「えー、そうですか?」

「そうそう、少なくともこんな柔らかい色合いじゃ
 美濃様は表現できないって。」


木佐の神妙な顔に、思わず小野寺は吹き出してしまう。



「そんなの美濃さんに聞かれたら怒られちゃいますよ。」

「だからいない時に言ってるんだよ。」



いたずらっ子に笑う木佐に、小野寺も
楽しい気分になってくる。


「じゃあ羽鳥さんはどれでしょう?」

「あー、羽鳥はこれしかないでしょ。」


小野寺に尋ねられた木佐は迷うことなく
緑色のマカロンを指差した。

「渋めの抹茶。これしかない。」

「あはは、確かに。」



甘いものが苦手だと言っていた羽鳥に合うのは
抹茶くらいかもしれない。

本人の雰囲気とも合っていると
小野寺も納得する。


「なんかさ、羽鳥って和室で抹茶とか飲んでるのに
 違和感なさそうだよね。」


「むしろ似合いそうな気がします。」



和室で抹茶を飲む羽鳥を想像して
2人はくすくすと顔を見合わせて笑う。


「じゃあ最後は高野さんだね。高野さんはどれだと思う?」


ひとしきり羽鳥の想像で笑った後に、
木佐がそう切り出してきて、途端、小野寺は戸惑う。


「た、高野さんは…」

その名前の人物を想像するだけで
小野寺は少し頬が赤くなってしまう。


「あれー、律っちゃん?顔が赤いぞー。」


それをからかう様に木佐がピンク色の
マカロンを持ち上げて、小野寺の頬にもっていく。


「これと一緒だね。律っちゃんをこんなにしちゃう
 高野さんにぴったりなのはフランボワーズかな。」

「き、木佐さん!」


肩をすくめて笑う木佐に、
小野寺はさらに顔を赤くして文句を言おうと
木佐が持っていたピンク色のマカロンを取り上げる。



ちょうどそこへ…



「お前ら、何騒いでんだ。」

「外まで声が聞こえてたぞ?」

「あ、マカロンだー。」

会議で席を外していた
高野、羽鳥、美濃が戻ってきた。



「おかえりー。」

「僕たちがいない間にお茶会してたの?」

「ちゃんと皆さんの分もありますよ。」


唇を尖らせる美濃に、
小野寺が小さく笑いながら告げる。

しかし、その言葉に答えたのは美濃ではなく…


「なら俺これがいい。」


そう言って、高野が小野寺が手にしていた
ピンク色のマカロンを小野寺の指ごとぱくりと食べた。



「んなぁああ!?」

「なに、その猫みたいな声。」

「あ、あんたなにして…」

「なにって、それが食いたかったから。」


しれっと言ってのける高野に
小野寺は先ほどとは比べ物にならないほど
顔を真っ赤にして突っかかる。



「だからって人の手ごと食べる人がいますか!!」

「うるせぇな。別にいいじゃねぇか。」


「よくありません!!」



そんな通所運転の喧嘩をしている2人を
横目に他の3人は、のんびりと会話をしていた。



「美濃様はカフェで羽鳥は抹茶ね。」

「ありがとー。」

「俺は甘いものは駄目だからな。
 吉川千春に持っていく。」

「高野さん!今日という今日は許しませんからね!」

「はいはい。」

「流すな!」



怒り狂う小野寺を流して、
さっさと自分の席に戻る高野。

それを見ていた木佐は悪だくみを思いつく。



「ねぇ、律っちゃん。」



「なんでし…!?」



「!?」



木佐に呼ばれて振り返った律は
しっかりと木佐の指ごとマカロンを咥えていた。



「木佐っ、てめえ!!」

「別にいいんでしょ?なら律っちゃんがしても
 何にも問題ないはずだけどー?」


「き、きひゃひゃん…ほれひもんひゃいひゃ…」


憤慨する高野と、マカロンを口いっぱいに入れて
もごもごしている小野寺に木佐は得意げに笑う。


「あーあ、木佐、どうなってもしらないよ?」

「俺たちは知らないからな。」


羽鳥と美濃は自分が被害を受けない様に
そそくさと自分の席へと戻って行った。



その後、木佐は高野にみっちりと
仕事をさせられるはめになり、

小野寺は特に悪くもないのに、
家に帰ってからたっぷりとお仕置きを受けさせられたのだった。





「「もう、マカロンなんて大嫌いっ!」」




*END*
120523 更新

【後書き】

「この想いは貴方だけ。」の望月美優様に相互記念で書かせていただきました!

望月様からのリクは『木佐+律。内容はおまかせ』ということでした!

CP話ではなかったので、ほんわか路線を
目指して、受け2人、スイーツできゃっきゃ言ってもらいましたw
最後は高律風味になりましたが。

ちなみに雪名のマカロンを選ぶならシトロンですかね。



望月様、駄作ではありますが
どうぞお納めください!



◇◇◇

糸谷はるあ様!
素敵すぎる小説ありがとうございます!

律っちゃんと木佐さんが可愛すぎます//

鼻にティッシュを詰めながら何度も読み返しました(笑)


そして…
展示が遅れてしまいすいませんでした(泣)


これからも逆流砂時計のストーカーは変わりませんが仲良くしてくださると嬉しいです。

家宝にします!!



本当にありがとうございました!


望月美優

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