ちょうへん
□はじまり
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−−いつも一緒に居る事が当たり前で。
今から約20年も前のこと。
滅多に人の寄り付かない、町外れにある公園のベンチ。
そこで俺達は出会った。
羽鳥芳雪と柳瀬優。二人は幼いながらも整った顔立ちをしていた。
「ねぇ、何してんの」
声をかけられた時には驚いた。
何処の誰かも分からないひょろひょろの童顔男に声をかける奴なんて世界中探したってこの二人しかいないだろう。
「へ!?あぁ、ぼーっとしてる」
「ふーん。」
そう言って二人はそれぞれ俺の隣に腰掛ける。
この出会いは俺の"予知"の力があってさえでも予想出来なかった、俺の予知の許容範囲を遥かにに上回る衝撃的な出会いだったと後々知ることとなる。
*
それから月日は流れ、トリと優は高校生になった。勿論、俺の姿形は全く変わっていない。
「チアキ、最近元気ないな…」
「それは俺も前から気になっていた。」
「うん……だいじょーぶ………」
−俺はここ暫く血を飲んでいない。つまりは飲まず食わずの状態と言うわけだ。なぜそんな事になるのか?…理由はいたってシンプル。トリと優が変わりばんこで俺の家に泊まりに来ていたからだ。
そして、今日は二人共来ていた。
(…そろそろ限界かも……)
心配してくれるのは嬉しいが、それなら1日でもいいから家に来ないで欲しい。
(あぁ、グラグラする……)
そして俺の視界は大きく揺れた。
*
「……アキ。しっかりしろ、チアキ!!」
…気がつくと俺が居たのはベッドの上。トリと優が心配そうな顔で俺の顔を覗き込む。
「俺、倒れたんだ……」
「心配したんだからな。チアキ、俺に出来る事があれば何でも言ってくれ。」
「俺にも言えよ」
「…柳瀬。マネをするな」
「…ほんと、羽鳥はうるさいなぁ」
(…血が飲みたい……)
−この時の俺は、本能でとんでもない事を口走ってしまった。そして、我に返った時に後悔する事となる。
「血……血をちょうだい…」
そう言ってかぷり、首筋に噛み付く。すぐにぷつりと皮膚を突き破る音がした。
血さえ飲めれば相手は誰でもよかった。
ごくり。一口飲んだ所で俺は我に返った。
「!!…あれ!?俺……何して…」
「チアキ……」
トリに名前を呼ばれて初めて気づく。…俺がトリの血を飲んでいたということを。
優はそんな様子をただ呆然と見つめている。上手く状況が飲み込めないのだろう。…俺も飲み込めない。
「落ち着け。」
ごつん、トリに頭を叩かれた。
首を動かした拍子にそこから血がたらりと流れる。
その様子に俺は思わず唾を飲んだ。
「お前が飲みたいのなら…飲めばいい。」
*
あの日からまた月日は流れ、トリも優も、もう立派な社会人へと成長した。俺はあの出来事があってからトリと優から順番に血を貰っている。
なので食事には困らない。
二人は、俺がバンパイアと分かった時には驚いていたけれど、今ではすっかり慣れてしまっている。
だから、そんな平穏な二人との日常が、その二人によって打ち破られるだなんて夢にも思わなかった。
「チアキが好きだ。」
(えぇ!?)
「チアキのこと…好きなんだけど。」
(えぇぇ!!?)
「「俺と付き合ってくれ。」」
「えええぇぇーーー!!?」
破られた日常。