水谷誕生日SS
阿水



冬の空気はさすように冷たい。
でも、前にある背中があったかくて。
そっと、頭を押し付けて、目を閉じる。


冬空、おくりもの。


「学校だ。」

23時45分。
坂道をぐんぐんあがっていく振動を感じて、俺は目を開けた。
下を見てみると、西浦が見える。
夜の学校は、昼間とはまったく違い、なんだか不気味だ。

「阿部、いったいどこ行くの。」

俺を乗せて必死でチャリをこぐ阿部に、俺は問いかけた。
けど、阿部は何も答えない。息が苦しいのかな。

阿部は、さっき突然チャリで俺ん家までやってきた。
そして、阿部に言われるがままに俺は阿部の後ろに乗って、今に至る。

どんどん坂道をあがっていって、下にある家や学校が小さくなっていく。
俺は一人で、「ちっせー」なんてつぶやいた。

「ついた。」

阿部は一言そう言った。
阿部が降りろというので、俺はチャリから降りる。

坂道の上から俺は見慣れた町並みを見下ろした。

明かりのついてる家は少ない。
外灯もあまりない町だ。
暗いけど、上から見下ろすのは初めてで、なんだか感動。

「違う。」

「へ?」

「上。」

「上?」

「下じゃなくて、上。」

阿部が空に向かって指さす。
その指に導かれるように、俺は頭を上にあげた。

あ。

キラキラ光る。
たくさんの星。

「・・・すげ・・・。」

俺ってば、下ばっかり見てて、ちっとも気づかなかった。
星、こんなにキレイに見えるんだ。

「水谷、誕生日おめでと。」

「へ?阿部、覚えてたの。」

覚えてるよ、鼻の頭を赤くした阿部が、白い息を吐きながら言った。

「あ、コレ?この星がプレゼント?阿部ってロマンチックなのなー。」

俺がからかうように言うと、阿部は「うるせぇ!」と言って、チャリにまたがった。

「え、あ、うそうそ!怒んないでよ。」

阿部はこっちを見ない。

「阿部、ありがとな。」

それでも阿部はこっちを振り向かないけど、阿部の顔赤くなってる気がする。
それが、かわいくて俺はクスクス笑う。

「・・・10秒以内に乗んねーと、おいてく!はいじゅー!」

「あっ、待って待って!!」

俺は急いで阿部のチャリの後ろにまたがって、ぎゅっと背中にくっついた。

「くっつきすぎだ。」

「いいじゃん、誕生日なんだし。」

「は?お前の誕生日はもうとっくに終わってますー。」

「ウソッ・・・。あっ、0時2分・・・。」

携帯の画面で確認すると、日付は5日に変わっていた。

「ってことで、振り落とすか。」

「阿部、本気でやりそうだからこわい。」

「あ、本気に決まってんじゃん。」

「やめっ・・・うわっ。」

突然ぐんと風を切って、勢いよく坂道をおりていく自転車。
俺は、バランスを崩しそうになったのを、なんとか持ちこたえた。
その冷たい風に、行きしなのことを思い出す。

ぐんぐんとスピードを出して、必死で自転車をこぐ阿部。
それは、俺の誕生日が終わる前に、あの星を見せるため?

俺は、もう一度ぎゅっと、阿部の背中にくっついた。

「うわっ!」

バランスをくずした自転車が、フラフラと坂道をどんどん駆け下りてく。

二人を乗せて、夜に溶けてく。




HAPPY BIRTHDAY HUMIKI!!!


文貴、お誕生日おめでとう!
サカミズサカ中心サイトなのに、阿水にしちゃいました('(ェ)'o)ゞ−☆ アッ
すんません><;

坂口スー

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