Fate/Zero・stay night
□甲斐性をください。(↑の続き) 5次アーチャー
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「はい、これで全部だよ。」
衛宮宅の居間のテーブルには、10枚近くのプリントの束が健在していた。
どれもこれも学校から配布されたもので、士郎が休んでいたために名前が持って行く様に頼まれたのだった。
「いや、しかし…珍しく士郎が学校を休んでると思ったら、まさか学校一の美少女と金髪碧眼美少女と一緒に暮らしてるとは…
あ、そう言えば桜ちゃんと藤お姉さんもいるから4人…ハーレムか、コノヤロー」
息継ぎなしに言ってのけた名前の視線の先には、優雅な所作で紅茶を堪能する我が校きっての美少女遠坂凜と、もぐもぐと美味しそうにお茶請けの菓子を食べるセイバーがいた。
「なっ!!違うんだ、名前!!
誤解だ!」
慌てて否定をする士郎にムッとした表情を見せた凜が肘打ちをお見舞いした。
「アハハ…士郎ったら…そんな否定しなくても、士郎は嘘つけない奴だから違うってわかるよー。
まったく、バカ正直に答える所も士郎らしいよねー。」
名前が小ばかにした様に言うと、次は士郎が頬を膨らます番だった。
「その辺にしておいたらどうだ、衛宮士郎。
まったく…余裕のない男だ」
これ以上続けていては埒が明かないと判断したアーチャーが介入してきた。
「そうよ、士郎。
もっとシャキ!としたらどうなの?」
凜が士郎を焚き付けたことで、次は士郎と凜で言い合いが始まった。
「あの…アーチャーさん…」
名前はそっとアーチャーにしか聞こえない声量で声をかけた。
「もしかして遠坂さんって…」
そこまで言った所で内容を把握したアーチャーは、深い溜め息をつきながら首肯を示した。
「我がマスターながら、悪趣味なものだ…」
予想が当たった名前は、2人を緩む頬を抑えながら見ていた。
「…あっ、そう言えば…マスターってことは、アーチャーさんは遠坂さんの執事…みたいなものですか?」
「まぁ…似た様なものだな…」
アーチャーは苦虫を噛みつぶした様な顔をしたが、次の瞬間には肩を竦めて飄々とした雰囲気を出していた。
「そっかぁ…うむ…士郎は遠坂さんを嫁に貰うんじゃなくて、自分が婿に行った方がいいんじゃ…」
名前がそんな一足も二足も飛んだことを呟くと、隣には肩を揺らして笑うアーチャーの姿があった。
「どうしたんですか?」
「…ククッ…いや、何…
衛宮士郎は随分と不憫だなと思ってな」
名前はアーチャーの言うことがわからず、首を傾げていた。
「えっ…凜ちゃんが嫁ってそんなに嫌ですかね?」
「……ハァ…そういう話ではないのだよ…」
先程まで笑っていたアーチャーは、名前を呆れた表情で一瞥した。
「ふむ…難しい話ですね。」
名前がこの科白を吐く時は、その話題に飽きたことを意味する。
それを熟知している彼にとっては、この丸投げしたかの様な彼女の科白は好都合だった。