Fate/Zero・stay night
□瞳の中を求める ディルムッド
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「あ、ソラウ。君に話があったのだ…」
そう言ってケイネス殿はソラウ様の元へ行ってしまった。
残された名前は、寂しげな表情でそれを見ていた。
あぁ…俺ならばそんな顔をさせることはないのに…。
彼女に何か声をかけようと思っても、月並みな言葉しか出て来なかった。
「またフラれちゃった。」
名前は涙で薄く覆われた瞳で俺を見た。
「まあ、婚約者がいる人を好きになる私も、どうかしてるよね…。」
その言葉は、彼女だけでなく、俺の中にも深く刺さった。
いや、違う…。
今、今の俺が恋慕っているのは……
「名前。」
気づけば名前を抱きしめていた。
「えっ…ちょっ……ディルムッド…?」
訳がわかっていない様子で、慌てている名前。
そんな姿が可愛いくて、更に抱きしめる力を強めた。
「名前……早く俺を見てくれ。」
発した声は、思っていたよりも弱々しく響いた。
ああ…せめて今だけは…
俺のチャームが貴女に効いてほしいとさえ、願わずにはいられない。
瞳の中を求める