Fate/Zero・stay night
□瞳の中を求める ディルムッド
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「はじめまして、ランサー。」
屈託のない笑みで俺に右手を差し出してきた女性。
それが俺と名前との出会いだった。
彼女は我が主であるケイネス殿が、教鞭を執っておられる時計塔の優等生であるらしい。
俺は、自分の黒子のチャームがまったく効かない彼女に、自然と心惹かれていた。
「名前、」
「なに、ディルムッド。」
今では真名で呼ばれている。
俺の方から頼んだのは言うまでもない。
「いや、何でもない…。」
「?変なディルムッド。」
そう言って楽しそうに笑う名前にまた惹かれていった。
「あ、ケイネス先生!」
そう言うと、目的の人物の元へ駆け出していった名前。
そして俺には決して見せることのない表情で、ケイネス殿を見つめていた。
……どうして俺はこうも…。
生前といい、自分はこと恋愛に関して障害が多い気がする。
再び名前を見ると、やはりその瞳は我が主しか写していなかった。
俺には決して見せることのない…恋する乙女特有のそれ。
生前あれほど悩まされたにも関わらず、彼女のそれを欲する自分がいた。