氷菓
□ぶっきらぼうな彼のセリフ5題 奉太郎
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『奉太郎は何だかんだ言って、優しいよね。』
結局、名前を自分の傘に入れて、俗に言うところの相合い傘をすることになった奉太郎。
上機嫌な様子で自分の隣を歩く名前を一瞥して、奉太郎は何だか彼女の言うままになっていることに気づいた。
「優しいも何も…お前が無理矢理頼んだんだろう…。」
奉太郎は呆れた顔で言った。
『そうゆうことじゃないんだよ。
まったく…奉太郎はわかってないなあ。』
チッチッチッ…と得意げに人差し指を立てて、それを左右に振る名前。
「お前の言ってることの方がわからんと思うが…。
……おい、あんまり離れると濡れるぞ。」
そう言うと奉太郎は名前の腕を引いて、近くに引き寄せた。
『フフッ…ほら、また。』
名前は楽しそうに笑うと、奉太郎に視線を向けた。
『まあ…私は奉太郎のそういう所が好きなんだけどね。』
その瞬間、折木は隣で笑う名前を直視できず、手の甲で口元を押さえるとそっぽを向いた。
そして折木はチラリと名前を見遣り、他意のなさそうな姿を見て本日二回目の溜め息を吐くのだった。
お前、それ、わざとか?
(え、何が?)
(もう知らん。(期待した俺が馬鹿だった。))