氷菓
□遠回りな告白 奉太郎
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「奉太郎!!
まだ省エネ生活送ってるの?
確かに省エネは環境には優しくても、薔薇色の高校生活には優しくないんだよ?
…って、聞いてるの?ホータロー!!」
「ちゃんと聞いてる聞いてる。
だからそんな大声を出すな。」
まったく…相変わらず何と非効率な行動をしてるんだ、こいつは。
突然、俺のクラスに来た名前は、開口一番俺のライフスタイルをめった刺しにした。
この…里志以上に喋るし、千反田以上に行動的なこいつは、所謂幼なじみという奴だ。
「奉太郎、人は嘘をつく時は無意識に二回言っちゃうんだよ?」
「……大事なことだから二回言ったまでだ。」
「ふーん…。」
そして伊原以上に勘の働く奴でもある。
「とにかく…俺は灰色でいいんだ。」
そう…俺には灰色が性に合ってる。
手元のペーパーバックに視線を落として、集中しようとしたが、何故か集中できなかった。
と言うのも、先程まであんなに騒音を撒き散らしていた名前が、ピタリと静かになったからだ。
…何なんだ、まったく…。
仕方なくペーパーバックから顔を上げて、すぐ隣に立っている名前を見上げた。
「…ホントは薔薇色がいい癖に…。」
名前は俯いていて、スカートをギュッと握っていた。
皺になるぞとは、流石にこの空気では言えなかった。
それに…
「あぁ…、本当は俺も薔薇色に憧れている。
だから古典部の奴らの浪費にも付き合ったりしてるし…俺自身、灰色か薔薇色かなんて、本当はわかっていないのかもしれない。」
これが俺の本音だ。
それを何となくでも察していた名前は、やはり俺の幼なじみなのだと実感させられる。
「じゃあ…
私が奉太郎の高校生活を薔薇色にしてあげる!!」
そう言って顔を上げた名前は、晴れやかな笑顔だった。
…さっきまでの雰囲気はどうした…。