黒子のバスケ

□憧憬からの何か 高尾和成
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凄く憧れている人がいる。
その人はいつも人懐っこそうな笑顔を浮かべて、たくさんの人に囲まれている。

私とはまるで対照的な人…そんな印象を持った。

そんな彼に近づきたいと思ったこともあった。

あったけれども………




「お、隣苗字さんか!
よろしくな!」


『あ…え…っと……』


いや、確かに近づきたいとは思ったけど、そういう意味じゃなくて…。

人として彼のような人になりたいとか、そういう意味だったんだけど……。



「あれ…苗字さん?」

『あ…はい、よろしくお願いします…!』


席替えで高尾君と隣同士になりました。







近くで高尾君を拝むようになって、やっぱり彼は私とは違うなと改めて実感した。


「苗字さんはどーすんの?」


『へ…?』


こうやって私なんかにも話しかけてくれる心優しい人です。


「あれ、聞いてなかった?
委員会決めだってさ。」


言われて前を見てみると、黒板には各委員会の名前が書き連ねてあった。


『私は…図書委員にしようかな…。』


本を読むのは好きだし、カウンター当番とか大変だから、あんまり競争率も高くないだろうし…。


「そっか、苗字さんって読書好きなの?」


なるほど…こうやって話題を広げればいいのか…ふむふむ…。


『うん、嫌いじゃないよ。』


「真ちゃんもよく本読んでんだよなー。
あ、真ちゃんってのは、緑間真太郎のことな!」


緑間君と高尾君はよく2人で一緒にいる。
あの気難しそうな緑間君とも仲良くなれてしまう高尾君は、やっぱりコミュ力がある。


「じゃあ、俺も図書委員にしよっかなー。」


『えっ…?』


驚いて高尾君の方に視線を向けると、高尾君は頬肘をついて黒板を見ていた。


私の頭の中にはたくさんの疑問が浮かんでパニック状態なのに、件の高尾君は放課後は部活があるから、当番は放課後以外がいいとか、週一だしいけるいけるとか…あまりにも自然だったから、内心取り乱した自分が少し恥ずかしかった。


『本当にいいの…?
私なんかと一緒で…。』


緑間君とか、他にも仲の良い友達と一緒の方がいいんじゃないかと思っての言葉だったけど、何を思ったのか、高尾君は少しムッとした顔をして言った。


「俺が、苗字さんと一緒がいいと思って選んでんだからいいんだよ!」


きゅっ…と胸の奥が疼いた気がした。

次の瞬間にはいつもの笑顔の高尾君がいた。


「つーわけで、よろしくな、苗字さん!」




私の中で何かが落ちる音がした。
 

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