黒子のバスケ

□放課後の邂逅 黄瀬涼太
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『……………。』


苗字名前は困惑した。なぜなら、今現在彼女の目の前で熟睡している金髪…というより黄色、うん、黄色。な髪の男を起こしさなければならないからだ。

本来なら名前は忘れ物を取りに、この放課後の教室に戻って来ただけのはずで、ここまで時間を取る必要はなかった。しかしこの男がなぜだかさっぱり皆目見当もつかないが、名前の机で寝ていたために、当初の予定より大幅に時間を食ってしまっていたのだ。


『チッ………おい、黄瀬、起きろ。』


名前が足先で机の足を蹴って揺らすと、問題の黄瀬涼太はノロノロと起き上がった。


「あれ………誰…ッスか…。」


『私が誰なのかなんてどうでもいい。
まずはさっさとそこから退け。』


寝ぼけ眼な黄瀬に向かって淡々と告げた名前は、机を引いて無理矢理中身を取り出した。


「…って……えっ……あ……あぁ!!…苗字っち!!!?」


一気に覚醒したのか、急に赤面して大声を上げた黄瀬を睨みながら小さく舌打ちした名前。


『何だ、そのふざけた名前は。
さっき私に誰かと聞いていた奴の言うことか。』


机から目的の物を取り出した名前は、さっさとそれを鞄にしまうと、踵を返した。


「あ、あの!!ちょっと待ってほしいッス!!」


『…何だ。』


煩わしそうに半身を黄瀬に向けた名前だったが、その足先が進行方向に向いたままであるため、彼女の帰宅願望は薄れてはいない。むしろ濃くなっていた。


「いや、特に用事とかはないッスけど……お、俺とお話しませんか?」


『嫌だ。』


「……………。」


『私は早く帰りたいんだ。それに……




君、部活はいいのか?』


名前の言葉にハッとした黄瀬は、途端に教室に備え付けられた時計に目を向けると、一瞬にしてあの赤かった顔が真っ青になったのだ。


「うわぁ!!どうしよう!
赤司っちに怒られるッス!!」


バタバタと荷物を持つ黄瀬を背にして、名前はさっさと歩き始めた。


「あっ…苗字っち!!」


振り返らない名前に一抹の寂しさを感じながらも、彼女が自分のことを少しでも知っていてくれたことに、頬が緩みそうになるのを必死に抑えた。


「……あ、苗字っちの席にいたことなんて言おう…。」


その途端に背中に冷や汗が流れるのを感じながら、黄瀬は鬼のキャプテンの待つ体育館へ走ったのだった。





(苗字っち…昨日のはその…苗字っちの席とは知らずに…!)


(そんなこと別に興味ない。)


(少しは興味持ってほしいッス!!)


(…………何なんだ、君は…。)
 

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