氷菓(原作沿い)

□5.謎解きスタート
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「五人の女生徒は、あの本を授業に使っていたのさ。
毎週、借りに行く当番を決めてな。」


「毎週ってのがわからないね。
貸し出し期間は……」


「伊原と同じことを訊くな。
気が合うってことか?

里志、お前は読みもしない本を手元で保管するのか?
毎週図書室に返すのが、一番楽な管理方法だったんだ。」


「……なるほどね。
で、見つかったものは?」


「もうわかってるだろう。
絵だよ。二年D・E・F組合同授業芸術科目美術科で制作された絵。」


私は美術準備室で見た絵を思い出した。
アングルや筆のタッチに色合いも多少違ったけれど、そこに描かれていたのは、どれも女の子の絵だった。

そしてその手にはあの『神山高校五十年の歩み』があった。


「やるね、ホータロー。
じゃあ、千反田さんが嗅いだ匂いは…」


「もちろん、絵の具の匂いさ。
そいつでわかったんだ。
美術準備室には充満してたぜ。」


福部君は、拍手を二、三度した。


「いや、見事見事。
おかげでなかなか面白い時間を過ごさせてもらったよ。」


「ええ。楽しかったですよ。
時間を短く感じました。」


『うん、まるで探偵になったみたいで楽しかった。』


「私は何時間もかかってわからなかったのに…。
折木にこんなことができるなんて!」


折木君はショルダーバッグを掴んで、今にも帰らんばかりの雰囲気だった。


「あ、まだ帰っちゃ駄目ですよ。」


「なんでだよ。
まだ何かあるのか?」


『お、折木君…。』


さすがにこれは苦笑するしかなかった。

福部君や摩耶花ちゃんに至っては、視線が冷たい。


「折木、あんた何しにきたの?」


その言葉で折木君は気づいたようだ。


「もうちょっと待ってなよ。
ホータローって時々抜けてるんだよね。」


「時々?
ふくちゃん、過大評価じやない?」


二人のやり取りの中で、折木君の扱いはなかなか粗雑で面白かった。
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