氷菓(原作沿い)
□1.出会う前の話
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『そう言えば、えるちゃんって何部なの?』
今思えば、えるちゃんと部活動について話したことがなかった。
「私は古典部に所属していますよ。」
『古典…部…?』
馴染みのない部活名だなと思ったけど、この神山高校の文科系部活動の幅の広さを考えれば、古典部があっても頷ける。
「はい、部員は総勢3名で、皆さんとても素敵な人たちばかりですよ。」
えるちゃんがここまで言うなら、本当に良い人たちばかりなのだろう…。
『古典部か…。』
「あの…良かったら古典部に入りませんか?」
『えっ…?』
えるちゃんは長い髪を揺らしながら、こちらにずいっと顔を近づけてきた。
「あっ…こんなことを言っては困りますよね…では、見学というのはどうでしょう?」
あれ、話が勝手に……。
「今日の放課後にでも行ってみましょう!
各々自由に参加なので、全員いるかはわかりませんが、誰かはいると思いますよ。」
えるちゃんの眩しい笑顔を前にして、気づけば頷いている自分がいた。
…いや、行ってみようとは思っていたから、何も問題はないけど…。
そして、授業開始のチャイムと共に先生が入って来たことで、クラス中の会話が中断され、みんな席に着いた。
私も教科書とノートを広げて、シャーペンの芯を適度に出した。
古典部か…楽しみだ。