氷菓(原作沿い)
□1.出会う前の話
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神山高校に入学して、無事高校生になることができた。
中学からの友達はあまりいなかったため、不安もあったが新しい友達ができたので、それなりに順調な滑り出しだ。
「名前さん、おはようございます。」
『あ、えるちゃん。
おはよう、今日も早いね。』
席が近くということで仲良くなった千反田えるちゃん。
とても可愛い子だけど、授業中の発言なんかは凄く凛々しくて、密かに憧れている。
「そうでしょうか?
私が早いのなら、名前さんも十分早いと言えますよ。」
そう言ってニコリと笑ったえるちゃんは、私の癒しだ…。
『そう言ってもらえると嬉しいよ。』
私も笑顔で返して、1時間目の教科書など…諸々を取り出そうと机の中に手を入れた。
カサ…
『…あ……。』
何かが手に当たったと思い出してみたら、それは私の頭を悩ませているものだった。
「……部活動の入部届…?」
首を傾げたえるちゃんの言う通り、これは部活動の入部届だ。
名前とクラスは明記されているものの、肝心の希望部活動の欄が空白だった。
「名前さんは何か部活動に入ろうと考えているんですか?」
『うん……でも、なかなか決まらなくて…
あぁー…もうみんな出してるのに…。』
入学式から疾うに3週間が過ぎていた。
ほとんどの生徒は既に入部届を提出するか、帰宅部員として早々に入部届を灰と変えるかの、どちらかだ。
しかし、私はそのどちらにも属すことなく、未だに悶々と部活動を迷っている。
入るなら早く入らないと、人間関係が出来上がってしまう。