氷菓(原作沿い)

□18.古典部温泉旅行A
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『ふぅ…。』


なんとか、怪談に加わらずに済んでホッとした。


あ、折木君に水を持って来たんだった。


当初の目的を忘れかけていた私は、なるべく音を立てない様に部屋に入った。


『折木君…大丈夫…?』


折木君が横になっている布団の横に座ると、折木君がうっすらと目を開けた。


「…苗字か…。」


『うん、あ、お水…持ってきたんだけど…。』


「あぁ…悪いな、そこに置いといてくれ。」


私は枕元にペットボトルの水をそっと置いた。


『気分はどう…?』


「あぁ…どうやら車酔いが残って……」


寝返りをうって、私の方を見た瞬間に、折木君は固まってしまった。


『折木君…?』


呼びかけても返事がない。
と言うか、顔が赤くなってる気が…。


『折木君、もしかして熱があるんじゃ…?』


「いや、大丈夫だ!!問題ない!!」


私が折木君の額に手を伸ばすと、折木君は急に慌てた様子で、私の方とは反対側に寝返ってしまった。


『でも…、さっきより顔が赤いけど…。』


「湯あたりしたのが、まだ残っているんだ…!
そ、それより…里志たちはどうした?」


『あ、2人なら皆で怪談をするからって、隣の部屋に行ったよ?』


「苗字は行かなくていいのか?」


『私は怪談はちょっと…。』


「そ、そうか…。」


『あ、もしかして迷惑…だよね…。』


「いや、違う!…違うんだが…その…だな……。」


折木君は未だに向こうを向いたままだったけど、迷惑じゃないと聞いて、単純な私はホッとした。


『ありがとう、折木君。
そう言ってくれて。』


私がそう言うと、折木君はチラリとこちらを一瞥した後、何か呟いていたけどよく聞き取れなかった。
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