氷菓(原作沿い)
□18.古典部温泉旅行A
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名前side
『あれ…、折木君はまだ…なのかな?』
思いのほかゆっくりお風呂に浸かっていた気がしたけど、折木君の姿が見えないところを見ると、私の方が先に出てきたみたいだ。
勝手なイメージだけど、男の子は女の子よりもお風呂は速いイメージがあったから、ちょっと意外だ。
あ、もしかして!!わ、私って、お風呂に入ってる時間が普通の人より短いのかな!?
あぁ…なんだか、恥ずかしくなってきた…。
「あれ、苗字さん…?」
『福部君……と、お、折木君!!!?』
一人で恥ずかしさに悶えていたら、福部君とぐったりと福部君に支えられている折木君の姿があった。
『えっ!!折木君どうしたの!?』
「湯あたりだよ。」
『……へ…?ゆ、湯あたり?』
「まったく、情けないったらありゃしないよ。
僕の半分も浸かってなかったっていうのに、ちょっと目を離した隙に目を回してたんだ。」
『そ、そうなんだ…。』
福部君は心底呆れた様子で溜息をつくと、ずり落ちそうになった折木君を抱えなおした。
結局、私と福部君とで旅館まで折木君を運ぶと、摩耶花ちゃんとばったり遭遇した。
「折木!?大丈夫なの?」
摩耶花ちゃんの問いに、福部君は私に言った内容を繰り返した。
「はぁ…折木、あんたって奴は…。」
その後、福部君と摩耶花ちゃんに布団を敷いてもらう間に、私は水を買いに行った。
「あ、おかえり苗字さん。ホータローなら部屋に寝かせといたから。」
『うん、わかった。』
「名前ちゃん、これから皆で怪談やるんだけど、名前ちゃんも一緒にやらない?」
怪談…確か、そういう話をしてると幽霊が寄って来るって聞いたことがあるからなぁ…
うわっ、背中に変な汗が…!
『わ、私はいいかな…。
あんまり怪談は得意じゃないから…。』
そう言うと、摩耶花ちゃんは残念そうに「わかった」と言って、福部君と隣の部屋に行った。