氷菓(原作沿い)
□17.古典部温泉旅行
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「もうじき迎えのバンが来るはずなんだけど…。」
バスから降りて到着した財前村は私たちの住む所とは違って、山の中といった印象だった。
「やあ、いい景色だね。」
『えっと…折木君…大丈夫…?』
「酔った…。」
気分が悪いのか口を押さえて中腰になっていた折木君に聞けば、車酔いだそうだ。
『言ってくれたら飴渡したのに…。』
やっぱりあの時気分が悪かったんだ…!
私ったら何も考えずにチョコレートのお菓子なんてあげてしまった。
後悔やら申し訳ないやらで、何もできないならせめてもの思いで背中を撫でた。
「これぐらいで音を上げるとは流石ホータローだ。」
「たった1時間半よ、だらしないわね。」
「折木さん、大丈夫ですか?」
福部君と摩耶花ちゃんの容赦のない言葉に、恨めしげに睨む折木君。
えるちゃんだけは折木君の心配をしてくれた。
そう言えばと、バッグに入れていたペットボトルのお茶の存在を思い出した。
『折木君、このお茶をどうぞ。
少しは気分が良くなると思うけど…。』
「ああ、悪いな……って……。」
私の手にあったお茶を受け取ろうとした折木君が、何かに気づいたのかハッと目を見開いて伸ばした手を止めていた。
『折木君…?』
「あ、いや…大丈夫だ。もう…治った…!」
そう言うと、折木君はフイッと明後日の方角を向いてしまった。
急にいらないと言われてしまったけど、本人が治ったって言うなら無理に渡すのも押し付けがましいか…。
それに顔色も良くなったみたいだし…ちょっと赤過ぎる気もするけど……
そこにちょうど良く車のクラクションが鳴った。