氷菓(原作沿い)

□17.古典部温泉旅行
2ページ/5ページ

「もうじき迎えのバンが来るはずなんだけど…。」


バスから降りて到着した財前村は私たちの住む所とは違って、山の中といった印象だった。


「やあ、いい景色だね。」


『えっと…折木君…大丈夫…?』


「酔った…。」


気分が悪いのか口を押さえて中腰になっていた折木君に聞けば、車酔いだそうだ。


『言ってくれたら飴渡したのに…。』


やっぱりあの時気分が悪かったんだ…!

私ったら何も考えずにチョコレートのお菓子なんてあげてしまった。


後悔やら申し訳ないやらで、何もできないならせめてもの思いで背中を撫でた。


「これぐらいで音を上げるとは流石ホータローだ。」


「たった1時間半よ、だらしないわね。」


「折木さん、大丈夫ですか?」


福部君と摩耶花ちゃんの容赦のない言葉に、恨めしげに睨む折木君。


えるちゃんだけは折木君の心配をしてくれた。


そう言えばと、バッグに入れていたペットボトルのお茶の存在を思い出した。


『折木君、このお茶をどうぞ。
少しは気分が良くなると思うけど…。』


「ああ、悪いな……って……。」


私の手にあったお茶を受け取ろうとした折木君が、何かに気づいたのかハッと目を見開いて伸ばした手を止めていた。


『折木君…?』


「あ、いや…大丈夫だ。もう…治った…!」


そう言うと、折木君はフイッと明後日の方角を向いてしまった。

急にいらないと言われてしまったけど、本人が治ったって言うなら無理に渡すのも押し付けがましいか…。

それに顔色も良くなったみたいだし…ちょっと赤過ぎる気もするけど……


そこにちょうど良く車のクラクションが鳴った。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ