氷菓(原作沿い)
□16.歴史ある古典部の真実
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「じゃ、じゃあ、糸魚川先生にお話を伺えば…!」
「三十三年前のことはわかる。
なんであれが英雄譚じゃなかったのか、なんであんな表紙なのか、なんで『氷菓』なんて奇妙なタイトルなのか…。
そしてお前の伯父のことも、全部教えてくれるだろうさ。」
折木君の話によると司書の糸魚川先生が、あの氷菓の序文を書いた郡山養子さんらしい。
まさか、そんな近くに本人がいたなんて…。
折木君は確信していたみたいで、既に糸魚川先生に確認を取った上に、アポまで取ったらしい。
『私が来た時にあっちから来たのは、図書室に行ってたからだったんだ。』
「あぁ。ただ、まさか苗字があんなに早く来るとは思わなかった。」
『うっ…なんだか、すみません。』
「あ、いや…責めてる訳じゃない…!
そ、それより…図書室に行くぞ。
そろそろ時間だからな。」
戸惑った様子の折木君だったけど、時計を見ると冷静になったのか、先陣切って私たちを促した。
私たちもそれに続いて皆で図書室に向かった。
図書室は夏休みにも関わらず、カンヤ祭や受験を控えた3年生で一杯だった。
廊下に比べると涼しくはあったが、人が少ない時よりは冷房の効きはそこそこ。
問題の糸魚川先生は、カウンターで何やら作業をしている様子だった。
「糸魚川先生。」
折木君が先生に声をかけると、先生はゆっくりと顔を上げて微笑んだ。
「ああ、古典部ね。」
あらかじめアポを取っていたからか、私たちを見て直ぐに、その用件を把握したのか、図書室を見回してから口を開いた。
「混んでるはね。司書室に行きましょうか。」
そう言って、私たちをカウンターの裏にある司書室へ案内した。