氷菓(原作沿い)

□14.省エネ主義の見解
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結局、福部君は仮説を立てずに終わり、最後は折木君の番だった。


「では、折木さん、お願いします。」


えるちゃんの言葉に頷いた折木君は、コピーを配っていく。


私も手元にやってきたコピーに目を通す。


『あ、これ…』


「ホータロー、これってもしかして…」


「そう、『神山高校五十年の歩み』。
公的記録にも何か載ってないかと思ってな。
結果は見ての通りだが…。」


そこで間を置いた折木君は、顔を上げた。


「すまん、発表の前にちょっと手洗い借りていいか。」


「ええ、構いませんよ。」


えるちゃんに続いて折木君が立ち上がって部屋を出て行った。




暫くして戻ってきた折木君の目は、なんだか出ていく前と違うように見えた。

…きっと彼はわかったんだ。


「悪いが、考え違いをしていて仮説を用意してこなかった。
だから俺の番は終わりということにして、まとめに入らないか?」


「ホータロー、何か思いついたね。」


ニヤリと笑って言った福部君の言葉に、私の中の期待が大きくなった。


「人の心を読むな。
……まあな。一通りの説明はつくだろう。」


「わたし…」


唐突にえるちゃんがポツリと呟いた。


「そうなるんじゃないかなって思っていました。
もし矛盾がなくて説得力のある仮説を立てることができるなら、それは折木さんだって。

聞かせてください。折木さんの考え。」


「そうだね。ぜひ聞こうじゃないか。」


「期待しちゃうわね、これまでの経緯からして。」


みんなの言葉に少し戸惑っていた折木君と目が合った。


『折木君ならできるよ、がんばって。』


笑顔でそう言うと、折木君は溜め息をついてから話し出した。


「そうだな。5W1Hで説明してみるか。
いつ、どこで、だれが、なぜ、どのように、なにをした…で、あってたか?」
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