氷菓(原作沿い)
□13.データベースの見解
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「報告は以上。
質問があったらどうぞ。」
しばしの沈黙のあと、再度えるちゃんが呼びかけると、折木君が手を挙げた。
「里志、この『伝統的な運動』ってのは、俺たちが追ってる事件で間違いないのか?
このコピーからだけじゃ、どうにも怪しいが。」
「さあね。これが例の事件のことだっていう証拠はない。」
「さあねって、お前。
それじゃあ、お前の資料は資料にもならんぜ。」
「そうかな、やっぱり。」
2人が言い合ってる最中だけど、私は意を決して口を開いた。
「やっぱりじゃないだろ。」
『あの…!
傍証なら…あるよ。』
そう私が言うと、折木君は目を大きくした後に、すぐいつもの表情に戻った。
「ほう。」
「私たちが追ってる事件も、それなりに盛り上がった事件だと思うんです。
二つの部活に取り上げられてるぐらいだから…。
その事件と、この『伝説的な事件』が別のものだとしたら、二つ事件があったうちの一方が伝説の運動だ!っていう記述があってもいいんじゃないかな?って…。』
「そうそう、それを言いたかったんだ。
さすが苗字さんだね。」
緊張でしどろもどろになってしまったけど、福部君の力にはなれたみたいで安心した。
折木君も納得の意を示してくれた。
「では、仮説を。」
「うーん、仮説ね。」
福部君は苦笑しながら、歯切れの悪い返答をした。
「どうしたんですか?」
「千反田さん、議事を乱すのは悪いと思うけど、仮説は立たないよ。自分で探してきて言うのもなんだけど、たったこれだけのコラム記事じゃあ…。
せいぜい、伊原説を修正するぐらいが関の山だね。
それに……
データベースは結論を出せないんだ。」