氷菓(原作沿い)
□11.古典部部長の見解
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「今回の会議の目的を確認しておきます。」
部長であるえるちゃんの司会で、検討会が始まった。
私は今回の目的を先程、かい摘まんで聞いただけだから、しっかり聞いておかないと。
「発端は、私の私的な思い出でした。
そして、先の『氷菓』の発見で、私の思い出が三十三年前に古典部に起きた事件と関係するかもしれないことがわかりました。
会議の目的は、この三十三年前の事件とはなんだったのかを推定することです。
なお、何らかの事実が判明したら、それは今年の古典部文集の記事としても取り上げる予定です。」
なるほど…。
推定までするんだ…。
思いの外、レベルが高い検討会に尻込みしてしまいそうだ。
「この一週間の間、手分けしていろんな資料を当たってきました。
それぞれの調査結果を報告し、そこから推定される『三十三年前』像を突き合わせて、より矛盾の少ない推定を導くのが今日の目的になります。」
みんなが資料を集めていた一週間、風邪とは言え、ただ寝てただけなんて…。
いやいや…気にしちゃダメだ!
そんな気持ちを振り払おうと、頭をフルフル振っていたら、摩耶花ちゃんから「どうしたの?」と不安げに聞かれてしまった。
…ゴメン、勝手な自己嫌悪です…。
「手順についてですが、資料の配布と報告、次にそれについての質問、次に報告者の仮説、次に仮説の検討という形にしたいと思います。
報告の間は質問などは禁止します。
……ごちゃごちゃになっちゃいますからね。
では、最初の報告を始めてください。」
えるちゃんは予定表らしきものは何も持たずに、一人一人に視線を送りながら、すらすらと説明を終えた。
司会が上手いなんて、えるちゃんらしい。
「最初の報告を……。あら?」
「ちーちゃん、誰からなの?」
「えーっと、誰からにしたらいいんでしょう?」
…うん、その妙なところでつまずくのがえるちゃんだよね…。