氷菓(原作沿い)

□10.密かな心遣い
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『あ、ごめんなさい。
遅れてしまって…。』


慌てて頭を下げると、摩耶花ちゃんは「気にしないで」と手を振った。


「僕たちと扱いが違いすぎないかな?」


「確かにな。」


福部君が折木君に耳打ちすると、折木君もしみじみと頷いた。


「日頃の行いの差じゃない?」


摩耶花ちゃんの相変わらずの鋭い言葉に、二人は苦笑いしていた。


上座に福部君、向かって左手に摩耶花ちゃん、そして右手に折木君が座っていた。


「名前さんもお好きな所に御座りください。」


そう言ったえるちゃんは、多分1番手前の下座に座るんだろう。


『じゃあ…摩耶花ちゃん、隣いいかな?
狭いけど…。』


「勿論、全然構わないよ。」


私は摩耶花ちゃんの隣に座ることにした。

やっぱり女の子の隣が落ち着く。


よく見ると、みんなテーブルの上にそれぞれ紙束やコピーの紙を持っていた。


えっ…何だろ…。

と言うより、私は今日の目的をまだ知らない。


「さて…」


えるちゃんがやはり下座に正座すると、顔を上げてみんなを見回した。


「始めましょうか、検討会。」


みんなが誰にともなく礼をする中、私だけが状況を掴めずにいた。


『あ、あの…検討会って…?』


私は頭の中が混乱しながらも、辛うじて言葉を発することができた。


「あ、名前さんについては折木さんから伺っていますよ。」


『……へっ…?』


訳がわからなくて、間抜けな声が出てしまったけど、許してほしい。


私が折木君に視線を移すと、折木君は目を泳がせていた。


「その…何だ…スマン、苗字。」


折木君が突然、私に頭を下げた。

えっ…ちょっ…どういうことなの?
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