氷菓(原作沿い)

□10.密かな心遣い
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夏休みに入った七月末。


風邪を引いたあの日から、結局学校に復帰したのは終業式の日だった。

思いの外悪かったみたいだ。
と言うより、折木君の忠告に反して、部屋の掃除や休んでた分の課題とか色々やってたら、本当にぶり返してしまった。

このことは折木君には言えないな…。



ふぅ…と溜め息をついて、バスに揺られながら窓の外を見た。

今日はついに、古典部がえるちゃんの家に集まる日なのだ。

結局、何をするのか知らないままだったけど、文集に関することなのは間違いないだろう。


今度は折木君の忠告に従って、バスでえるちゃんの家へと向かっている。

簡単な交通アクセスと道を教えてもらったので、多分大丈夫だ……多分。



何とか文字通り右往左往しながらも、えるちゃんの家に着いた。

……………何と言うか……さすが豪農千反田家…って感じだ。


広大な田圃の中に生垣に囲まれた、大きな日本家屋と門があった。

福部君が言っていた通りの外装なので、多分間違いないと思う。


門をくぐって飛び石の上を通って玄関までたどり着く。

そこで千反田という表札の存在に気づいて一安心した。


そして来客用のベルを鳴らす。


「……はぁい。」


えるちゃんらしき声が聞こえたと思うと、やはり戸を引いたのはえるちゃんだった。


「あ、名前さん!
お待ちしていました。」


えるちゃんは若草色のワンピースを着ていて、とても可愛いかった。


「道、わかりましたか?」


『あ、うん…えるちゃんから聞いた通りに来たからわかったよ。
それに、この家は目立つから。』


豪農と呼ばれるだけあって、周りを田圃に囲まれているえるちゃんの家は、目立つのですぐにわかった。


やがて案内された部屋には、すでに私を除く古典部メンバーが全員揃っていた。
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