氷菓(原作沿い)
□8.壁新聞部部長の秘密
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「ちょ、ちょっと待って!
何よその赤外線センサーって。
スパイ小説でも読みすぎたの?」
私も急に出てきた赤外線センサーという言葉に混乱しながらも、摩耶花ちゃんに賛同した。
「お前らこそ、おもちゃ屋の広告も見てないのか?
赤外線ビームを何かが遮ると警報を鳴らすぐらいの仕掛け、いまどき五千円も出せばお釣りがくるぜ。」
「そんなもの、どこに」
折木君…おもちゃ屋の広告とか見るんだ…。
…じゃなくて…!!
でも、摩耶花ちゃんの言うように、そんなもの……もしかして…。
『もしかして…あの白い箱?』
「そうだ。
三階の廊下のここから先には壁新聞部の部室しかないって辺りに、白い箱でカモフラージュされてあった。
それだけじゃそうとはわからなかったけどな、他の状況証拠と、準備室にあったスピーカーとを併せて考えれば多分あれはその手のものだろう。」
『そこまで考えてたんだ…。』
「やっぱりあんた、ヘン」
「何を典型的一般人を捕まえて。
……どこまで話したっけ。
ああそうか、赤外線センサーを設置して接近者をいち早く察知し、接近者が来るやB1用紙が吹き飛ぶ危険を冒してまで、なぜ部屋の換気を強行したのか。
どうだ、伊原。」
尋ねられた摩耶花ちゃんはしばらく考え込むと、小さく声を発した。
「……におい……?」
摩耶花ちゃんがそう言うと、折木君は二、三回拍手をした。
「そうだ、においを消したいってのが妥当な線だろう。
そう考えれば、やつが消臭スプレーのアルコール臭をさせていたのも、潔癖症の故じゃないって思えるな。
で、そこまで消したいにおいとは?
やばい薬物を使っている様子はなかったな。」
「なら、つまり…」
『…煙草?』
そう言うと、折木君は大きく頷いた。