氷菓(原作沿い)

□6.文集探しの旅
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そして準備室の中に入ると、準備室という名前通り、生物の授業につかう備品が収納されていた。

しかし、狭い部屋の中心には段ボールの上にベニヤ板を重ねた即席のテーブルがあった。

テーブルの上の紙が、扇風機の作り出す風によって煽られていた。

開け放たれた窓に向かって、扇風機の風は進んでいる。


「……?」


『折木君、どうしたの?』


折木君が不思議そうな表情をしていたのでそう聞くと、「いや、何でもない。」と言われてしまった。


早速、薬品金庫を探してみたが、この狭い準備室を軽く見回してもそれらしきものはなかった。


「去年、なんで部室が入れ替わったか知っていますか?」


折木君は、私たちから少し離れた所にいる遠垣内先輩に訊いた。


「いや、知らない。
大方、いくつか潰れた部活があったからだろう。」


「部室の入れ替わりの時、何か荷物の出し入れはありませんでしたか?」


「…そういえば、段ボール箱をいくつか運んだな。」


「段ボール箱ですね?」


「ああ。」


折木君の表情が、あの図書室の時のようにほんの少し変わった。


『…折木君、何かわかったの?』


私は遠垣内先輩に聞こえないように、小声で訊いた。


「!…ああ、一応な。
(里志みたいだ…。)」


『すごい…。』


「いや、まあ…とにかく。
文集の在り処は大体わかった…が、それを手に入れるとなると、ちょっと難題だ…。
だから…そうだな。
カマをかけてみるか。」


後半は独り言の様になっていたが、折木君の中で方針が決まったようだ。


「上手く調子を合わせてくれよ。」


折木君に小声で耳打ちされたので、しっかりと頷いておいた。

断じて、心拍数が上がったりなんてしてません。うん。
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