氷菓(原作沿い)

□6.文集探しの旅
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気づけば、生物講義室の前に着いていた。

えるちゃんがドアに手をかけた。


「……あら?」


えるちゃんがドアを開けようとするが、一向に開かない。


「開きませんよ。」


「開かないみたいね。」


自然とみんな折木君に視線が集まる。


「いや、本当に鍵はなかったんだ。
それで開かないんなら、俺は知らんぞ。」


もう一度、今度は摩耶花ちゃんがドアを引くが、開かない。


「……またですか。」


『またって?』


「ええ。四月の話なんですけど…。」


えるちゃんが四月にも、扉に鍵がかかって、閉じ込められていた話をした。


「……ということなんです。」


「へえ、折木がそんなことをね。」


『やっぱり、折木君って凄いね。』


話題の中心人物は、今にも帰りそうな雰囲気だ。


「だーれかいませんかー。」


折木君が冗談めかして、ドアの内に向けて声をかけた。


やはり何も反応がないかと思ったが、ロックの開く鈍い音が返ってきた。


「ん?」


そして内側からドアが開かれた。


そこに立っていたのは、学生ズボンに薄手のシャツを着た男の人だった。

すらりと背は高く、割合に格好が良かった。

私たちの襟元の学年記章を見て、彼は愛想よく笑いかけてきた。


「ああ、悪いね。鍵をかけてた。
我が壁新聞部に入部希望かな?」


中にいたのなら、もう少し早く開けてくれたら良かったのに…。


「ここは、壁新聞部の部室なんですか?」


「そうだよ。
入部者じゃないのか。」


彼は教室から出ると、後ろ手にドアを閉めた。


その時、アルコールのような匂いと……うん、なんか変な匂いがしたけど気にしない。


なぜか一瞬眉をひそめられたが、すぐに愛想よい顔になった。


「じゃあ、何か用でも?」


互いに視線を送り合うと、えるちゃんが一歩前に出た。
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