氷菓
□プレゼント 奉太郎
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「まあ、そんな素直じゃないホータローのために、僕がプレゼントを用意しておいたから、楽しみにしてなよ。」
昇降口までたどり着き、靴箱に靴を入れながら里志はニヤリと笑った。
いやな予感しかしないな…。
「ホータローの灰色な高校生活に、僕のショッキングピンクをおすそ分けさ。」
それを捨て台詞に、里志は先に行ってしまった。
「何だったんだ、あいつは。」
しかし、俺でも大して自覚のなかったソレを里志に言い当てられた動揺はあった。
苗字さんと里志に接点があったとは…。
教室までの道のりでついそんなことを考えてしまった俺は、フルフルと頭を振った。
何やってんだ…。
『…あ……。』
冷静になった所で、後ろから女子特有のソプラノ声が聞こえた。
その声が、つい先刻の話題の中心であった彼女の声に酷似していたため、反射で振り向いてしまった。
『…おはよう、折木君。』
振り向いた先にはやはりと言うか、まさかと言うか、苗字さんが立っていた。
そしてあろうことか、挨拶を交わした。
「…あ、ああ…おはよう…」
辛うじて挨拶はできたが、あまりの展開の速さにボーッとしていた俺を見て、苗字さんは首を傾げた。
『行かないの?』
「あ、そうだな。」
そこから何となく二人で教室まで行ってしまい、その日は何だか一日中ボーッとしていた。
放課後やって来たしたり顔の里志から事情を聞いて、殴ってしまったのは不可抗力だ。
(ホータローだって嬉しかったくせに!)
(…うるさい。)
(あ、折木君に嫌われた。)
(いや、そういう訳じゃ…!)
……………………………
うちのホータローは
灰色じゃない…(笑)