氷菓

□ぶっきらぼうな彼のセリフ5題 奉太郎
3ページ/5ページ

『ねえ、奉太郎。どうしたの?』


先ほどから自分と喋るどころか、目も合わせてくれなくなった奉太郎に声をかける名前。

しかし奉太郎は、頑なに名前の方を見ようとはしなかった。


『奉太郎〜?怒ってるの?』


「………………。」


『……奉太郎…?』


「………………。」


『……………。』


不安げに奉太郎の様子を伺っていた名前だったが、徐々に声が小さくなっていき、最後には黙ってしまった。


不思議に思った奉太郎は、横目で名前を見ると、俯いていた。


「おい…『奉太郎…私…ここでいいよ…。
ゴメンね…無理矢理入ってきて…。』


そう言って名前は傘から飛び出した。


「…は?おい!名前!!」


『うわっ…ちょっ…!!』


咄嗟に名前の腕を掴んだ奉太郎は、そのまま腕を強引に引き戻した。

名前は勢い余って、奉太郎の胸に鼻をぶつけた。


『痛いなー…もう…。』


痛みからか、それとも別の理由からか…名前は涙目になっていたが、構わず奉太郎はその肩を掴んだ。


「お前、何考えてるんだ!!
風邪引く気か、このバカ!!」


『なっ…!!バカって何よ!
私は奉太郎のためを思って…。
……奉太郎が私と帰るのが嫌そうだったから…だから…その…。』


「嫌じゃない…。」


『………………え…?』


名前が驚いて顔を上げると、奉太郎の顔が真っ赤になっていた。


「だから…!!
…お、お前と帰るのは…嫌じゃない…。」


『えっ…それって……。』


「だから…!!」




何度も言わせるな



(折木、もう怒ってない?)


(怒ってないから、早く帰るぞ。(こいつ、さっきの言葉の意味、絶対わかってないだろ…。)
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ