Fate/Zero・stay night
□甲斐性をください。(↑の続き) 5次アーチャー
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「まぁ女の子としては、お嫁に行くなら、それなりに甲斐性がある人がいいですかね」
名前は砂糖がとっくに溶けている紅茶を、事もなげにスプーンで掻き混ぜる。
「ほう…つまり、君から見て衛宮士郎には甲斐性がないという訳か…」
「ない訳じゃないんですけど……やっぱり遠坂さんと比べるとねぇ…」
名前はケラケラと笑うが、未だに言い争いを続ける2人には、聞こえていないようだった。
「その点、アーチャーさんは甲斐性ありそうですよね。
何となくですけど…」
名前は紅茶のカップに口を付けながら、アーチャーを見上げた。
「士郎以上にこんな美味しい紅茶を作れるなんて、甲斐性があるに違いありませんよ。」
根拠とは言い難い理由だったが、ふわりと笑う名前にアーチャーは何も言わず、代わりに不敵な笑みを浮かべて見せると、名前との距離を縮めてきた。
「……ならば…私の嫁になるか?
衛宮士郎より君を幸せにできる自信はあるぞ。」
耳元で囁かれたその声は、先程より低く、名前の背中を一瞬痺れが走った。
あぁ…彼はやはり男の人なんだと実感させられた。
士郎と似ていると思っていたが、士郎にはないものをまだ隠し持っているようだ。
名前の頭は思ったより冷静かと思われたが、それはただの逃避で、実際、未だに至近距離で自分を見つめるアーチャーと目が合ってしまえば、頬に熱が集まるのを感じた。
「ア、アーチャーさ…「あぁっ!!お、おまえ…何やって…!!」
名前が辛うじて発したアーチャーの名を遮るように、士郎が名前に接近しているアーチャーを妨害した。
アーチャーはひどく不機嫌な顔をしていたが、凜のニヤニヤとした顔を見ると、深く溜め息をついて名前からそっと離れた。
「…私の隣は名前のために空けておこう…」
離れる間際にそんな殺し文句と共に、ニヤリと笑った彼を見て、名前の頭の中は完全にショートするのだった。
……滅多なことは言うもんじゃない…。
甲斐性をください。