氷菓(原作沿い)

□18.古典部温泉旅行A
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折木side



里志と伊原の助けで布団に横になっていると、襖の開く音が聞こえた。


『折木君…大丈夫…?』


「…苗字か…。」


苗字の声が聞こえたが、怠くて額と目の間に置いている腕をどける所か、目を開ける気にもならない…。


そう言えば、帰りに送ると言っておきながら、結局俺はこんな有様になってしまった。

里志によると俺を運ぶのも手伝ってくれたらしい。


「うん、あ、お水…持ってきたんだけど…。」


それに加えて水を持ってきてくれたらしい。


「あぁ…悪いな、そこに置いといてくれ。」


枕元で微かに音がした。


『気分はどう…?』


「あぁ…どうやら車酔いが残って……」


俺は寝返りをうって、苗字の方を見た所で絶句してしまった。


『折木君…?』


苗字の呼びかけが遠くに聞こえた。


いや、今の今まですっかり忘れていたが、俺が湯あたりしてしまったのは車酔いなんかのせいではなく……


気を失う前に自分が考えていたことを瞬時に思い出してしまった俺は、顔に熱が集まるのを感じた。

それと同時に苗字の浴衣から覗く鎖骨や唇に目を奪われていた。


『折木君、もしかして熱があるんじゃ…?』


そう言って、苗字が俺に手を伸ばしてきたことで正気に戻ると、直ぐに寝返りを打って苗字を視界から外すと同時に、その手からも何とか逃れた。


「いや、大丈夫だ!!問題ない!!」


まくし立てるようにそう言ったが、苗字はでも…と納得していないようだった。


『さっきより顔が赤いけど…。』


「湯あたりしたのが、まだ残っているんだ…!
そ、それより…里志たちはどうした?」


顔が赤いことに触れられたくなくて、俺は慌てて話題を変えた。

それにしても、吃りすぎだ…。


『あ、2人なら皆で怪談をするからって、隣の部屋に行ったよ?』


「苗字は行かなくていいのか?」


よし、顔を合わせなければ普通に喋れる。


『私は怪談はちょっと…。』


「そ、そうか…。」


『あ、もしかして迷惑…だよね…。』


うまく頭が回らなくて、気のなさげな返事になってしまったからか、苗字の不安げな声が聞こえた。


「いや、違う!…違うんだが…その…だな……。」


迷惑じゃないということを伝えたくて、妙に必死な口調になってしまった。
しかし、何て言えばいいんだ?
苗字といるとつい妙な想像をしてしまいます。か?
そんなこと言える訳がないし、言ったが最後、俺に未来はないだろう…。
主に伊原の鉄拳によって。


『ありがとう、折木君。
そう言ってくれて。』


俺が何と言うか悶々と考えている間に、苗字のお人よしな性格のおかげか、何とか名誉を維持できたようだ。
むしろ感謝するのは俺の方だと言うのに。

あぁ…まったくもって……

「罪悪感が…。」


俺の小さな嘆きは苗字の耳には届いていない。






―――――――――――
奉太郎が変態に…!
偽物すぎて本当にすみません!!
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