氷菓(原作沿い)
□14.省エネ主義の見解
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それから検討会はお開きとなり、またバスに乗って家まで帰った。
その帰路で、私はずっとあの違和感を考えていた。
えるちゃんの提示した資料の一文。
『あれは、英雄譚などでは決してなかった。』
書き手の心象だからってことで、大して触れられなかったけど…心象だからこそ、伝わってくる何かがあった。
正直、文章を読み解くより感情移入しちゃう私だからかもだけど。
でもあれは、無視できない気がする。
英雄譚などではなかったなら…彼は、関谷潤は何を思い学校を去ったのか。
英雄と称され、全校生徒に惜しまれながら去ったのが、本当に三十三年前の真実だったのだろうか。
違う。
それだけはわかる。
こんな私の考えなんて、みんなのに比べたら論理的でも何でもないけど…
でも、1番近くで関谷潤という人を見ていたあの氷菓の書き手が、私たちに伝えたかったことはきっと私たちの答えとは違う。
ふと窓の外を眺めると、見慣れた風景が流れていた。
随分と長い時間考え込んでたみたい。
それからは家に着くまではよく覚えてない。
ただ、ずっと私の胸中を占めていたのは、この違和感を折木君に伝えなくては、という思いだけだった。
この時、彼もまた気づいていたことを私は知らない。