氷菓(原作沿い)

□12.寸鉄少女の見解
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折木君は居住まいを正して、淡々と述べ始めた。


「簡単なことさ。
お前は千反田の説を文化祭が十月で騒動が六月だってことで否定した。
だけどな。『氷菓』も『団結と祝砲』も信じるなら、騒動は六月、退学は文化祭と同じ時期の十月だ。
千反田説のその部分を否定する要素はないだろう。
暴力行為による退学だっていうなら、この四ヶ月のズレは妙だぜ。」


「けどそれは、『氷菓』の方が不正確じゃない。
『団結と祝砲』には六月って明記してあるけど、『氷菓』には『もう、一年になる』って書かれてるだけ。事件は六月、退学も六月、文化祭は十月。
どうしても無理っていうほどの話じゃないと思うけど。」


うーん…摩耶花ちゃんの気持ちもわからなくはないけど…。


『氷菓の内容も、考慮に入れた方がいいと思う…。』


「私も、無視できない数字だと思います。」


「僕もそう思うね。
文化祭を以ってもう一年って言ってるんだから、やっぱり退学は十月って考えるべきだよ。」


折木君も黙って頷くと、摩耶花ちゃんは唇を尖らせた。


「むー。細かい性格してるよね、みんな。」


摩耶花ちゃんのその仕草で、場の空気が和んだ気がした。


「でも、方向性はいいセンいってると思うよ。」


「そうですね。抜本的な見直しは必要ないでしょう。」


『私もそう思うよ。
それに……この四ヶ月のズレは、きっと真相に関係があると思うし。』


そう…きっとこの不可思議なズレが生じた原因こそが、関谷さんに起きた何かを解明する鍵になるはずだ。


根拠はないけど、そんな気がした。



「じゃあ、私の順番はこれで終わりでいいの?」


摩耶花ちゃんがそう訊ねると、えるちゃんは頷いた。


となると、次は福部君だ。

えるちゃんに促されて、福部君はコピーを配っていたが、ふとその動きを止めた。


「あ、そうだ、言い忘れてた。
僕の資料で摩耶花の説は部分否定されるね。」
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