氷菓(原作沿い)
□12.寸鉄少女の見解
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特に質問も上がらなかったため、いよいよ摩耶花ちゃんの仮説の発表となる。
「ええと、じゃあ、私の仮説ね。
まずちーちゃん説の否定だけど、これはわかるわよね。」
みんな沈黙で同意を示した。
10月の文化祭で問題を起こしたとするえるちゃんの仮説は、摩耶花ちゃんの資料にハッキリと『関谷純さんの英雄的な指導』は6月に起きたと記述があることで、否定されている。
その後に続いた摩耶花ちゃんの仮説は、要約すると、三十三年前、なんらかの形で生徒たちの自主性が損なわれるようなことがあって、古典部の部長…つまり関谷さんたちは暴力によってそれに反発した。という内容だった。
説明を終えると、摩耶花ちゃんはノートを閉じて、全員を見回した。
「うぅん…。もどかしいですね。」
えるちゃんの言葉に折木君も頷いた。
「もどかしいって何が?」
「伊原さんの説の主旨は先生方がなにか生徒の不利益になるようなことをして、それに対抗して生徒が暴力行為を働いた、ってことですよね。」
「うん、そうかな。」
「でも、それだとなんだか、わかることがわかったようでわかりません。」
そう言うえるちゃんの言葉をよく理解できずに、首を傾げた私を一瞥した折木君が補足した。
「お前の説は抽象的すぎるのさ。
もっとも、これ以上は読み取りようもないけどな。」
「確かに、具体的かって言われるとそうじゃないけど…。」
摩耶花ちゃんは納得がいかなそうな顔だった。
「で、矛盾はあった?」
「あるね。」
摩耶花ちゃんの問いに対して、折木君はあっさり答えた。