氷菓(原作沿い)

□9.気になる二人
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「あ、そうだ…まだ伝えることがあった。」


長居する気はないと言って、早々に帰ろうとしていた折木君は、玄関にて靴を履いた所でそう言った。


「夏休みに千反田の家に行くことになった。」


『折木君が…?』


「んな訳、あるか!」


軽くペシッと頭を叩かれた。
一応病人ということを考慮してくれたのか、大して痛くはなかった。


「古典部で行くんだよ。」


『古典部みんなで?
楽しそうだね!』


想像しただけで楽しみになってきた。


『えるちゃんの家で何するの?』


あの古典部が勢揃いするからには、ただの遊びじゃないのだろうと、具体的な内容を聞いた。


「………まあ…何だ…。
俺もよく知らない。」


妙に歯切れが悪かったけど、知らないならそれも仕方ない。


『あ、私、えるちゃんの家知らない…。

折木君はどうやって行くの?』


「俺は里志に連れて行ってもらうつもりだ。
俺もあいつも足は自転車だからな。」


『じゃあ、私も一緒に連れて行ってもらおうかな。』


そう言ったが、折木君からは却下されてしまった。


「千反田の家まではここからだと、結構距離があるらしいから、苗字は車にした方がいい。」


絶賛風邪引き中の私が折木君に反駁できる訳もなく、大人しく頷いておいた。


折木君はそれをしっかり見届けると、ドアノブに手をかけた。


「夏休み入ってすぐの日だからな。

それまでに風邪を治しておけよ。」


『大丈夫だよ、もう治りかけだから。』


「治りかけが1番危ないって知らないのか?」


『あ……。』


そうだったという顔をしていると、折木君が笑った。


「じゃあ、またな。」


『うん、またね。』


私が手を振ると、折木君はドアノブを回してドアを開けて帰って行った。
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