氷菓(原作沿い)
□9.気になる二人
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『折木君…えっ、何で折木君が私の家を…!?
いや、その前に私、こんな格好で…!!』
「おい、苗字、ちょっと落ち着け。
風邪が悪化するぞ。」
折木君の言葉で、一旦頭を冷やせた。
よし…ひとまず玄関ではなんなので、上がってもらった。
リビングに通してソファに腰かけてもらい、お茶でも準備しようとしたら止められた。
「病人は大人しくしてろ。」
『はい…。』
渋々頷くと、折木君は大きな溜め息を一度吐いて、持ってきたかばんをゴソゴソと漁り始めた。
「千反田から色々と預かってきたんだ。」
そう言ってテーブルの上に置かれたプリント類。
『わあ、ありがとう。』
「いや、礼なら千反田に言った方がいいと思うぞ。」
『でも持ってきてくれたのは折木君だから…。
…そう言えば、何で折木君が持ってきてくれたの?』
普通なら同じクラスのえるちゃんが持って来そうだけど…。
「あいつの家は苗字の家と正反対だからな。
その点俺の方が近かったから代わりに持ってきた。」
今思えば、えるちゃんとは学校を出てすぐに別れてしまう。
一方で折木君とはなかなか近くまで一緒だった覚えも…。
『なるほど…。
ごめんね、折木君は省エネなのに。』
以前福部君たちが言っていた。
折木君は省エネ主義なのだと。
「別に俺は無駄が嫌いなだけであって、こうしてお前の所にプリントを持って行くことが無駄だとは思ってない。
…詰まる所、気にするな。」
折木君は視線を外してぶっきらぼうに言った。
折木君ならの優しさなのだとわからないほど鈍くはない。
『なら、良かった。
ありがとう、折木君。』
私はそんな折木君が面白くて笑っていた。