〜黎明の桜・原田左之助の抄〜
□玉簪〜第三章〜
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歳「おい、生きてるか!?」
その時、副長の声が聞こえた。
千「−−はいっ!」
真っ先に駆け付けてきたのは副長だった。
既に刀を抜いていて、隊士に切り掛かる。
隊士も戦おうとするが、副長の方が早かった。
隊士「きゃあああああ!!」
隊士の叫びが響く。
けど、隊士は刀を振り上げたまま立っている。
歳「今のうちだ。早くこっちへ来い!」
千「は、はい!」
千鶴ちゃんが立ち上がって副長の元へ転がり込んだ。
私も立ち上がらなければと思うのに、足に力が入らない。
千「妙ちゃん?」
「………」
千鶴ちゃんは私の異変に気付いて、名前を呼んでくれた。
けど、
「……ぁぁっ……ぁ…」
私の腰は完全に抜けている。
隊士「……キヒッキヒヒヒ……」
隊士は不気味な声を出すと、最後の力を振り絞って私に刀を振り降ろそうとした。
私、きっとここで死ぬんだ。
そう思って、私は目をギュッとつぶって身を固くした。
そして刀が振り降ろされる音がする。
ガキィィン!
その時、刀を弾く音が響いた。
目を開ければ、私の目の前に白い背と紅い髪が見える。
左「馬っ鹿野郎っ!!どんな時でも諦めんなっ!!」
原田さんが私を庇って、隊士の刀を弾いてくれたのだ。
新「こりゃあ、ひでぇ。話が通じる状態じゃねえな。」
そして、永倉さん、藤堂さんも駆け付けてくれた。
皆、次々と刀を抜いていく。
平「新八っつぁん、左之さん!抜かるんじゃないぜ!?」
左「平助、この野郎!誰にものいってやがる!?」
新「羅刹だろうと平隊士に後れをとるようじゃ、組長を返上しなきゃなんねぇぞ」
たちまち幹部の皆が隊士を取り囲み、一度に切り込む。
そして、羅刹となった隊士は私の目の前で絶命した。
私はただ、その状況を呆然と見ていた。
特に何も感じなかった。
頭が真っ白で、何も思う事が出来なかった。
。