〜黎明の桜・原田左之助の抄〜

□君影〜章間〜
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その後、永倉さんは納得した様で、着替えに帰って行った。

私は悲しくて辛くてどうしてもその場から動けなかった。

朝餉……どうしよう。

最近は、千鶴ちゃんも幹部の皆と食べているから私も皆と食べているんだけど。

どうしても原田さんに会いたくない。

原田さん………

私、どうしたらいいですか?

こんなにも貴方を想っています。

けど、私の想いは貴方には届かない。

私、どうすれば……

私は洗濯桶を抱きしめて顔を隠した。

涙が頬を伝っているのが分かったから。

左「……妙ちゃん、朝餉だけど?」

ふと、後ろから声をかけられ体がビクッと反応する。

声だけで分かる。

原田さんだ。

「………」

私は泣き顔を見られたくなくて、桶に顔を突っ込んだままだ。

左「……どうした?具合でも悪いのか?」

原田さんはそう言いながら、私の隣に座った。

原田さんの声かけに私は首を横に振る。

どうして、私に優しくするんだろう?

他に好いた人が居るならば、私の事など放っておいて欲しいのに。

左「……もしかして、泣いてる、のか?」

「………」

私は顔を上げる事も声を出す事も出来ない。

左「何か辛い事でもあったのか?」

私は再び原田さんに首を振って答えた。

原田さんの優しさで私の涙は止まらなくなっていた。

「……ごめんなさい」

私は一言、それだけを言った。

今は一人にして欲しかったから。

原田さんの優しさが余計に悲しくさせるから。

左「……そっか。」

原田さんは私の頭を撫でて、私の横から立ち上がる。

左「朝餉、部屋に運んどくな。」

そう言って向こうへ行ってくれた。

きっと、あの困った様な顔をしていたに違いない。

私が原田さんにそんな顔をさせてしまっている。

原田さんは優しいから、私を心配してくれる。

けど、優しくされればされただけ私は原田さんへの想いは止まらなくなってしまう。

こんなにも苦しい……

刺すような胸の痛みが苦しくて、息が出来ない……

恋って、こんなに苦しいんだ。

私は初めて恋の苦みを覚えた。








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