〜黎明の桜・原田左之助の抄〜
□蒼空〜章間〜
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俺は今は巡察中だ。
町ではそこら中から『ええじゃないか、ええじゃないか』と聞こえてくる。
馬鹿みたいに騒ぐ町人達を尻目に俺は不逞浪士を探す。
京の町は最近、薩摩や長州の奴らが増えた様な気がしてならねぇ。
長州なんぞ少し前なら往来を歩く事さえ不可能だったのに。
薩摩も薩摩だ。
始めは公武合体派だったてぇのに、いつの間にか長州と組んで倒幕派に乗り換えやがった。
調子のいいやつらだ。
そう思う反面、幕府のやり方も気に入らねぇ。
幕府のお偉いさんは何事も手を打つのが遅くて、正直腹が立つ。
俺には全てが裏目に出ている様にしか見えねぇ。
近藤さんも最近じゃ、そのお偉いさんとしか話さなくなってしまった。
世の中のうんちくを語るばかりで、町の状況がさっぱり分かってねぇんじゃねぇかと思う事がある。
土方さんが何とか取り持ってはいるが、これからどうなる事やら………
新八なんて不満が溜まる一方でいつそれが爆発するか冷や冷やモンだ。
そんな事を考えていると、一軒の店先に簪が並んでいるのが見えた。
俺はふとそこで足を止めた。
すると、一人の隊士がそれに気付いて戻ってきた。
隊士「組長、どうしたんすか?」
左「……お、おう。」
俺は少し罰が悪くなって適当に返事を返した。
隊士「お、簪っすか、何、女にでもやるんすか?やっぱりモテる男は違うっすね!」
けど、隊士にはばれてたみてぇで冷やかされる。
左「そんなんじゃねぇよ、いいからお前ら先に行け。」
隊士「へいへい。」
俺は隊士を先に行かせて、簪をもう一度見る。
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