急に外の空気にあたりたくなって、ベランダに出た。
マンションの最上階。
高校生でこんないいところに一人暮らし。我ながら、親のおかげで良い生活ができてると贅沢に感じる。
空を見上げれば、マンションの灯りにも負けないくらい、明るく輝く満月があった。
『ふあー、気持ちいい』
夏の夜といっても、外はじっとりと暑い。
吹き抜ける風が頬をなで、なんだかくすぐったかった。
どれほどベランダにいたか分からないが、そろそろ寝ようと窓を開けた時、ふと背後に気配を感じた。
『!?』
振り返るとそこには、今や知らない人はいないくらいの有名人。白い罪人。
『怪盗、キッド・・・』
「私をご存知でしたか。こんな美しいお嬢さんに知ってもらえるなんて、光栄です」
『なんであなたがここに・・・警察呼ぶわよ』
「そんなに怖い顔をなさらないでください」
そう言いながら、キッドは私の前で膝まつき、手の甲にキスを落とした。
『な、何するの!っきゃ!』
勢いよく手を引くと、反動で体が倒れそうになってしまった。
床と衝突する寸前で、キッドが体を受け止める。
「おっと、かわいいお嬢さんが怪我でもしたら大変だ」
キッドは腰と背中に手を回し、名前を抱きかかえる。
名前の体は上半身が部屋の中、下半身がベランダという状態である。
キッドは名前の体を起こし、自分の顔を名前の顔へと近づける。
『や!離して!』
名前は思い切りキッドの胸板を押し返すと、名前は床へ背中を打ち付けてしまった。
『いった・・・』
「申し訳ありません、名前嬢。お怪我は?」
『大丈夫だから、もう離して!』
未だに名前の腰へ手を回すキッドを必死にひきはなそうとするが、キッドは離れることもなく、名前をお姫様抱っこをして、部屋の中へ入っていく。