『ねぇ哀ちゃん聞いて!私と新一、付き合いだしてもう半年経つのに、まだキス止まりなの!いくらなんでもひどくない!?』
「へぇ」
ある夏の日のこと。
急に名前が博士の家におしかけてきたと思ったらこれだ。哀が名前の新一についての愚痴、というかのろけを聞く羽目になるのもすでに日常茶飯のことだ。
名前と哀は、新一がコナンであったころからの親友だ。
新一は今では元の姿に戻ったが、哀は元に戻らず、今でも小さなままだ。
騒がしい名前と、クールな哀の仲がいいのは、みんなの謎であった。
『私ね、これでも頑張ってるのに……』
そう言って名前は、過去の行動を指折り数えていく。
一緒に下着買いに行こう、って誘ってとびっきりかわいい下着を買った。
新しい水着を新一の家でお披露目会と称して、着てアピールした。
お泊りしたい、って言って新一の両親がいない時にお泊りもした。
もちろんこの時、お風呂あがりはバスタオル一枚で出てきたのに!
話半分に聞いていた哀だったが、名前の話を聞いていると、確かに新一のヘタレぐあいには呆れてくる。
「でも、それって、工藤君があなたに興味がないってことじゃないの?」
『哀ちゃんのいじわるー!』
「冗談よ。あなたの頑張りを賞して今回は協力してあげる」
『え!本当に!』
「今回だけよ」
『ありがとう!哀ちゃん大好き!』
抱きついてきた名前を引き剥がして、哀は小さな小瓶を取り出してきた。
『これ何?』
「それは、試してみてからのお楽しみ。この液をコーヒーにでも1、2滴垂らせばOKよ」
結果は後でちゃんと報告するように、そう言って名前を送り出した。