この帝丹高校で人気者の彼は、同じく人気者の彼女のことが好きなのでありました。
「名前先輩!」
『あれ工藤君じゃない!どうしたの?』
「ツーショット見られるなんて、今日はついてるわ!」
「ホント工藤って、苗字先輩のこと好きだよね」
「だって、苗字先輩、って言ったら、容姿端麗・頭脳明晰・明るい性格で、人望も厚い。おまけに帝丹高校の生徒会長!」
工藤新一と苗字名前。
二人ともたくさんのファンが存在するくらいの人気者であった。
しかし、みんながこのツーショットを喜ぶ理由は、単に人気者をいっぺんに見られるからではなかった。
「名前先輩、今日一緒に帰りませんか?」
『ありゃー。ごめんね工藤君。今日は委員会があるから遅くまで残ってなきゃいけないんだよー』
「じゃあ俺待ってますから」
『遅くなるから、子供ははやくお帰りなさい』
新一の頭の上に手をポンと乗せ、名前は新一を廊下に残し、自分の教室へ行ってしまった。
新一に背を向けたまま手をひらひらと振りながら、こちらを振り返ることなく、行ってしまう。
また、負けた……。
「新一」
「何だよ、蘭」
「また、負けたの?」
明らかに落ち込んだ様子の新一を廊下にいた生徒は皆温かい目で見守る。
こんな時に話しかけてくれるのは、からかいに来た新一のクラスメイトか、幼馴染の毛利蘭くらいだ。
「またって、別にいいだろ」
「あの名前先輩が新一なんかに振り向くわけないでしょ?」
「うっせーな。俺は頑張るって決めたんだ」
「あんたには高嶺の花よ」
「わーってるよ、んなこと!」
クラスに帰れば、サッカー部のやつらに「また負けたのか」と、さっき蘭に言われたことと同じことを言われる。
俺が名前先輩に軽やかにかわされた回数は、今日が記念すべき100回目。
一緒に帰れたこともあったけれど、帰っただけ。それ以上進展することはなかった。
生徒会長として生徒代表で話すあの人の凛とした姿に一目惚れして、何度もアタックした。
あの、自他共に認めるヘタレの俺が!あんなに頑張ってるのに、名前先輩はちっとも振り向いてくれない!
自分でもモテル方だと思っていただけに、落ち込み度は大きいが、俺は頑張るんだ!
今では、学校の生徒全員が俺の気持ちを知っている。名前先輩が俺の気持ちを知っているかは知らないけれど、そんなことは関係ねぇ。
俺は俺なりに頑張るんだ!
俺は、お前が好きなんだからな!!
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