「さっすが俺の名前ちゃん!お弁当もおいしいけど、やっぱり夕飯も最高!」
『あ、ありがとう』
いつもと同じ黒羽君の褒め言葉。
もう慣れた、と思ったけれど、二人きりの空間で聞くと、なんだか緊張してしまう。
「ごちそうさまでした!ありがとな!」
『こちらこそ。黒羽君のおかげで今日の夕飯は楽しかったよ。ありがとう』
名前は優しく微笑んだ。
「(こんなにやわらかく微笑むとか、反則だ!)」
『じゃあ、後片付けは私がしておくから、黒羽君はもう帰っていいよ』
そう言って名前は自分の食器をいくつか重ねて、台所へ運ぼうと快斗に背を向ける。
シンクの上にガチャンと食器を置いたとき、突然後ろから抱きしめられた。
相手は誰か、なんて分かっている。
だってこの部屋には、私と、黒羽君しか、いない。
「名前は、俺の好きって言葉冗談だと思ってる?」
『…え』
「俺、最初から本気だから」
『く、黒羽君、離して…』
黒羽君は抱きしめていた力を少し緩めて、私を黒羽君と向き合わせてまた抱きしめた。
「俺、名前のこと本気で好きだ。今日ここに来たのだって、まぁ、下心もあったけど、あ、もちろん少しだけな。でも、名前の寂しさを埋められたら、って思ったからで。俺じゃ、ダメか…?」
『く、黒羽君…』
本当は、こんなに想いをぶつけてきてくれる黒羽君に、いつも救われていた。
家に帰っても、思い出すのは黒羽君のことで。
黒羽君を思っていたら、静かで寂しい夜も、寂しくなかった。
明日になったら、また会える。
また好きだ、って言ってくれる、そう思ったら寂しくなかった。
『あのね、私…私も、黒羽君…あの、快斗君のこと…』
好き、そう言おうと思いながら、私は快斗君の背中に腕をまわした。
『好き…って、どこ触ってるんだー!』
手を回した瞬間、快斗君の手は私の胸を、今までにないくらいいやらしく揉みだした。
「だって、これで俺ら恋人だろ?だったらやることはひとつ…」
『こんの…バ快斗ー!』
この後、快斗が名前の鉄拳をくらう羽目になったのは、言うまでもない。
「これで、俺たち夫婦だね☆」
『何でよ!本人の意思を尊重しろ!!』
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