壱
□お湯
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夜。それは突然のことだった。
伊佐那海とりんの部屋にて突然来た才蔵と途中から来た佐助が言い争い、そして、部屋からりんだけを何故か才蔵が引っ張り出し三人廊下に立つと伊佐那海に手を出していないだろうなと妹大好き三好清海が武器もって走ってきたのだ。
だが、
バタッ
「!!」
襲い掛かる寸前でべたりと倒れ、突然にぷーんと来る甘ったるいようなキーンとくるような、とても言い表せない匂いにぐらりと倒れそうになり咄嗟にりんは近くにいた才蔵の片手を掴み崩れ落ちそうな体を無理矢理気力と手の力で支える。
『………………うっ。』
「りん!!」
「なにごと!?」
ちらりとりんは佐助の方を見るとガクガクと体が震えていた。
才蔵がりんが掴む逆の方の手でパンと伊佐那海の部屋を開けると先程まで元気だった伊佐那海が寝ていた。
「茶に毒?」
『………違うこれは煙のせい』
「まさか……伊賀流…
って、オイりん。
お前も伊賀の忍だろーが。毒に耐性持ってる筈じゃねーのかよ。」
ぺちっ。
『痛ッ!!弱っているときに叩く!?酷いよ!!』
「ぅ!!(涙目に上目遣い………
こいつ誘ってんのか?)」
軽く頭を叩くだけでふらりと体が重力に沿い倒れそうになる為ギュッと掴む手に更に力をいれる。そして、うるうるとした目でそして上目遣いで才蔵を見るために言葉に詰まる
『私、匂いとか視角とか良すぎるせいでその分耐性がほぼ無いんだよ。
かなり伊賀で訓練されても煙とかだと涙はボタボタ出るし鼻から水が出るし最終的には鼻が効かなくなるわ毒だと本当強すぎて生死に関わる事もあった。結局それは今でも治らず仕舞いなんだよ。』
「……………それにしては良く長文ペラペラと一息で言えたな。」
『むー。言わないときが気が済まないし。』
「それ、終わってからで良かったと思うが………」
『言え、見たいな顔してるから言っただけ。』
ほらこれ貸すこれなら良いだろ?と才蔵から手渡されたのは黒い布だった。何処から取り出したんだよ才蔵。
とりあえず、応急処置として布を鼻、口を覆おうと思ったのだが手を離せば倒れるためにじーっと布を見つめているとしょうがねぇな。と才蔵がため息混じりにクルクルと強くも弱くもなく綺麗に巻いてくれた。
…………………女子慣れしてんな
先程まできつかった毒が少し改善され、フラフラするものの一人で立てるようになった。佐助もいつの間にか鼻、口を黒い布で覆っていたのでいつの間に!?とりんは驚いた。
そんなりんを無視し、才蔵は佐助にヒソヒソと話す。
「いいか!
動けるのは俺たちだけだ。オッサンは頼んだぞ!」
「承知!」
すばっと廊下を風のように走る佐助を見送りりんは才蔵にクルリと目を見て問う。
『…………私、かなり鼻効かなくなったけど少しでも才蔵のサポートはするよ。』
「大丈夫かよ。その体で。」
『……………うん。まあ。』
えへへと笑って誤魔化すものの才蔵にはとうにお見通しだった訳でりんを見る目は疑いを持った目だった。はぁ。やっぱりかとガクリと首を落とすのだがポンとりんの頭に手が置かれ撫でられる。
「言葉だけ貰っとく。一応、お前も狙われているから大人しくしてろ。
俺がお前を守ってやる。いいな?」
『………うわぁ。惚れ台詞ありがとうごさいまーす。これを是非伊佐那海に言って欲しいなー。(当分伊佐那海にキャーキャー発狂するとは思うけれど)』
「…………はぁ。(本気でりんに言ったつもりだったが、やはり鈍感。)」
『…………?』
才蔵の溜め息は恋愛が鈍感過ぎるりんにとって無意味に終わった。