壱
□ぬるま湯
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夜…………いや真夜中のこと
『んー。外はやっぱり最高』
ぐーんと手を上げ背伸びをする。
やはりあの兄だか妹だか苦手な話をされるのは苦手。外の空気は新鮮で心を落ち着かせることができた。
ここは森の何処か木の頂上。
りんは木々に立ち、片目を隠し侵入者が来たら即座に殺る体制をとり、時々何もないと背伸びをして、それが終わるとまた殺る体制をとる。それの繰り返しが続く。
何故かって?
『(…………血が足りない。)』
ただ飢えていた。
もう、あの話は完全に無視か忘れたようだ。
『(何でだろ最近貧血気味が続くんだよねー。
そこまでなったことはなかったのに。)』
はぁとため息をはく。
だが、いやな香りが近づいているようで、りんの顔がどんどんと歪な笑顔に変わっていく。
『(獲物だ。
わざわざ獲物が来てくれるとは)』
ぎりと下唇を噛み血を流す。
もはや戦う前から目が血走っている。
タタタタ
―――――――キタヨ獲物ガ
タタタタ
―――――――血ヲ血ヲ血ヲ
タタタタ
―――――――ハハハハハハハ
タタタタ
―――――――イケ!
「おや、早いお出迎えだね」
『…………………』
木に勢いよく助走を付けるように重力で折れない程度にし、勢いを付けて飛び上がる。敵の近くに降り立ち素早く距離に近づき小太刀を振りかざせば敵も
扇を持ち防ぐ、バッと距離をとり離れれば可愛らしい忍もいるもんだね、と敵が口を開く。
『……………………』
「何か喋ったらどうだい?」
『…………………』
「口が聴けない………って
訳でもなさそうだが………」
『……………………』
ダンッ
キィン キィン キィン
「今日は戦う気では無いのだがねえ。」
苦無を四本同時に投げれば直ぐ様扇で払われ地に落ちるそれよりも早くりんは行動をとり敵の背後へと回り小太刀を振る。
片目の青が赤へと変わり
ギラリと両目が紅くギラギラ輝く。
「!!!」
『ガアアアアアアア!!!!』
キン
ドォォォォォン
『!!………………ぐっ』
小太刀で斬ったと思われたのだが敵はまるで見切っていたかのように避け、りんの目の前に火薬が準備されており爆発した。煙がもくもくと立ち込める中、
反応が遅かったせいか避けたものの足や手やら至るところから火傷、出血をし、ペタリと座り込んだ。
それと敵の臭いが消えた。
がくりと落ち込むと脳に響く謎の声が届き頭を抱える。
『…………くそっ。』
逃がしちまったじゃねぇか
『……………………』
何度目だ?
『…………………しらない』
これ以上逃がしたら
『…………………何?』
お前の体
ウバッテヤラァ。
プツン
『……………………はぁ。』
………………意味分からない。
ともう聞こえなくなった事に溜め息をつき地面にと寝転がる。
『本当、私って何者なんだろう。』
りんの片目は青にも戻り
一人言はなにもなかったかのように木霊と化した。
そのころ才蔵は明かりの付いていない真っ暗な部屋………自分の部屋にてりんが殺り損ねた相手と対峙していた。
「忍か、名を名乗れ」
「石川五衛門」
「その名の盗っ人は5年も前に釜煎りにされたぜ」
「世に盗人の種は尽きまじってね
わちきはその残り種さ!」
「詐称(かたり)じゃねえのか」
「バカにしてもらっちゃ困るわねえ
れっきとした二代目だよ。
隠形の技は親譲りさ」
「なるほどな
でその盗っ人がなにを盗みに来たんだ?」
「あちきが狙うのは
奇魂と真田幸村の命と」
_______呪詛犬神さ