壱
□強くなれる理由
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まあるい月が顔を出している夜。才蔵は城の屋根でねっころがっていた。
実際話がそのあと続いたのだが、知らねぇよとそそくさと部屋を抜け出し今、この状態。
《命拾いしましたね》
「どうやら伏兵がいるようですし…狙われている状態でこのお嬢さんを連れていくのは不利。
退きぎわです。」
バカッと半蔵目掛けて弾が来たのでひゅっと回転して避ける。
「しかしガッカリしましたよ威勢よく出てきたわりにはたいしたことなくて
異名だけがひとり歩きしてただけですね。」
それではと半蔵は霧と共に消えていったのを才蔵は口をギリッと噛みしめるしかなかった。
そうだ……伊佐波海……とちらりとみると佐助に横抱きにされていた。
佐助はそんな才蔵に気づいたようでちらりとみてそそくさと歩いていった。
俺を助けたのは銃を半蔵に撃った筧十蔵という人。
なんて情けねえ
守れなかった
などと腕を顔に当て考え事をしていると1つの案に納得しゆっくりと起き上がる。
…………誰かに必要とされるのは
重っ苦しい。そんなもの捨てちまえ!
『わぁ!!』
「!!……うわっ!!」
才蔵の顔目掛けてニヤリと笑うりん。
才蔵は気づかなかったのは考え事とりんの素早さのせいだ。
「お前っ怪我は大丈夫なのか?」
才蔵は尋ねるとりんは大丈夫なわけないじゃんと率直に返した。
『未だにあちらこちら痛いし、貧血ぎみだし、フラフラだけどさ』
スリスリと傷口をりんは撫でる。かなり辛そうに見える。
「すまなかった。」
実際、半蔵の奥義をほぼ全部才蔵の代わりにりんが受けてしまっている。戦いの中で一番傷が酷いのはりんだろう。
『謝んなくて大丈夫!!
何故なら私はそんなことで休んじゃいけないからなの。』
「は?」
『私は主に絶対服従。たとえ、怪我をしても血が出てても、そんなことは気にせずに、ただ任務をこなすし、命令には有無を言わない。有言実行。契約第一だけど。』
ふふっと笑うりんの姿に才蔵はドキリとする。
「それでいいのかよ。」
『ええ、勿論。』
少し、早乙女家の秘密について話そうかとポツリト言うと、才蔵の隣へ座り話始めた。
『早乙女家の決まりごとは、主が殺された、死んでしまった場合、次の主はその主の関係者及び殺した本人に指導権が渡る。
それで………』
その人それぞれ違うがその人を主と見極め方が違うらしい。
例えば、戦い、監視、それをせず直ぐ様主などと様々だが、
『私は私の上だと見極めた者しか主だと認めない。
主だと思われない者は直ぐ様切り捨て、次から次へと捜しまくった』
そう、何十人も数えきれないほど殺して次の主……いや、獲物へと。
「んで、りんが主、主と言ってるから見つけたんだろ?」
『うん。やっとね。
その人は私に打ち勝ちやっとだと喜んで服従した。けどね。』
無理な難問を押し付けて私を狩りだし、一度戻ってきたときには主がいなくなってた。
『どこいったんだろ?と探したけど、そこにはいなくてさ、もうどうしようもないからこれを遂行するためにいるのさ。』
「その主の顔わからないんだろ?依頼のやつもあやふやなんだろ?」
『最初は両方ともはっきりと覚えていた。はっきりと、しかし、何かにぶつかったのかとうかはわからないが一部記憶がなくってさ。』
その依頼と主の存在の所がすっぽりと消えてしまった。
………………《守れ!!》
あるのは守れという命令だけ。何を守れというのだ!!それが契約?それすらもわからない。
『主は確かにいるはずなのになぁ』
はぁとガッカリしたようすのりん。才蔵はそんなりんの頭に手を乗せて……
ワシャワシャワシャ
『ひぃぃぃ、髪ぐしゃぐしゃになるからやめれぇ!!』
「はははは」
ぐすんとぐれるりんに才蔵は少し笑う。
『スンスン…………はっ!!』
臭いを嗅いでどんどん屋根の下へといくりん。何かを見つけたのかヤバっと言えば
『才蔵、ちょいと消えるよーー!!』
といっていつもの森へと消えていった。
そう下には佐助がいたのだった。
その後、才蔵と佐助が少し殴り合いをするのだが幸村様が現れ、りんが部屋から逃げたということを佐助に告げる。
パッと森へと入り直ぐ様りんを見つけ、おいかけっこが始まるのだが、りんは怪我人の為、すぐに取っ捕まり部屋へと無理矢理戻されたとさ。
『うえぇぇぇぇぇぇん!!』